理事会では意見分かれるも0.50%幅で利上げを実施
欧州中央銀行(ECB)は15日、理事会を開催し、政策金利である、ECB預金金利を0.50%幅で利上げ、2.00%とすることを決めた。過去2会合では、0.75%幅で利上げを実施していた。また、ECBの保有する約5兆ユーロ(約730兆円) の債券ポートフォリオを来年3月から圧縮することも発表した。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、今回の利上げ幅が、前回より小幅になったことで、ECBのインフレ警戒に対する姿勢や政策判断が転換したと受け止めることは誤りだと述べた。インフレとの闘いは長期戦であり、0.50%幅での利上げペースが一定期間続くことを見込むべきと述べて、インフレ抑制のためには、利上げが続くことを警告した。また、今回の政策理事会では、メンバーの3分の1余りが0.75%幅の利上げを支持した模様で、意見が分かれていたことも伝えられた。
量的引き締めも開始
今回注目すべきは、ECBがパンデミックの際に、需要喚起・景気刺激を目的として、資金供給のために市場から購入した巨額の債券残高を減らす計画を決めたことだろう(資産購入プログラムAPP)。これは、金融政策を引き締める措置で、いわゆる量的引き締め(QT)を開始することになる。まず、来年第2四半期に、保有する債券を月平均150億ユーロのペースで減らすことが発表された。金利を引き上げているのに、量的緩和状態を続けることは矛盾している。これまでは、景気への配慮から、QTには手を付けていなかったが、この点にも踏み込んだことで、ECBがインフレとの闘いをしっかりと進めるという姿勢を明確にしたことになる。
ECBの利上げ決定を受けて、短期金融市場では、来年央の中銀預金金利予想を3.00%で織り込んだ。利上げ発表前は2.93%だった。僅かな金利上昇にとどまった理由は、市場でのリセッション懸念がある。ただ、ラガルド総裁は、金融市場はインフレ抑制に必要な利上げ幅を適切に織り込んでこなかったとも述べた。金融市場と中央銀行とのギャップは、米国だけではなく、欧州でも大きくなっていると認識しておくべきだろう。
イングランド銀行も利上げ
イングランド銀行(BOE)は15日、政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を0.50%引き上げ、3.50%とすることを決めた。9会合連続での利上げ実施で、政策金利は14年ぶりの高い水準となった。
ベイリーBOE総裁は、英国の物価上昇圧力は、ピークを過ぎた可能性があるとの認識を示したものの、インフレ率は今後数カ月にわたって、非常に高い状態が続くとの見通しを持っており、インフレを抑え込む取り組みを推し進めると語った。一方で、MPCは、英国経済が既にリセッションに入っており、今年第4四半期は前期比で0.1%のマイナス成長になると予想していることを明らかにした。
インフレを抑制することと、英国経済が深刻なリセッションに落ち込むリスクとを、どうバランスさせるのか、非常に難しい問題にBOEは直面している。MPCは、9人の委員で構成されるが、今回の決定に際しては、ベイリー総裁を含む6人が0.50%幅の利上げに賛成し、マン委員は0.75%幅の利上げを主張、テンレイロ・ディングラ両委員は金利を据え置くことを主張した。利上げ幅について委員の間で意見が分かれたことは、政策のバランスをとることの難しさを示すものであろう。
インフレ抑制を優先
公表された議事要旨によれば、MPCは、雇用市場が引き締まっており、国内の物価と賃金に対するインフレ圧力も根強いと見ており、インフレが持続する可能性が高いと判断している。そして、さらなる金融引き締めを正当化するとの見解を示した。ベイリー総裁がハント財務相に宛てた書簡でも、英国経済が現状の予測に沿って展開すれば、一段の利上げが必要となると説明した。
BOEの政策発表を受けて、短期金融市場では、金利が逆に低下した。2023年8月時点の短期金利予測は、利上げ発表前は4.61%だったが、4.51%に低下した。リセッション懸念が一段と強まったことを示す。英ポンドも対米ドルで下落し、1.24ドルから1.22ドルを割り込んだ。