米国雇用統計(8月)で注目される点を解説
9月2日、金融市場の注目を集めていた8月の米国雇用統計が米国労働省から発表された。非農業部門の雇用者数は、31.5万人増加で事前の予想を上回った。前月7月の同雇用者数は52.6万人増と速報値の52.8万人増からはいくぶん下方修正されたが、高い水準を維持した。失業率は3.7%に上昇し、6カ月ぶりに3.6%を上回った。
雇用者数の増加は、とびぬけて高かった前月7月からは鈍化したものの、引き続き底堅い。金融市場は、経済見通しを非常に不確実に見ており、米国経済が来年度にリセッションに陥るという懸念を強めている一方で、雇用市場では、しっかりした需要があることが示されたことは大変興味深い。雇用市場での需要の強さは、労働者の収入の確保を通じて、消費支出を下支えし続けることになるだろう。
労働参加率が上昇、賃金上昇率は伸び鈍化
もうひとつ、8月の雇用統計で目を引くのは、労働参加率が上昇したことである。雇用市場は引き締まった状況が続いていたが、労働参加率が増加することで、求職者が増え、これが賃金の伸びを鈍化させることが考えられる。実際のところ、平均時給は前月比0.3%増と伸びが鈍っており、インフレ圧力が和らぎつつある兆しと解釈する市場参加者も一定程度いるようである。確かに、雇用は現状程度の伸びが続く一方で、賃金上昇率が鈍化すれば、ソフトランディングに向かうシナリオも視野に入るわけで、FRBにとってはフォローの風になるだろう。ただ、平均時給の伸び自体は、前年同月比では5.2%増とまだ高く、これがトレンドとして定着するかどうかは、単月の統計を見るだけでは判別を付けることは難しい。
雇用統計発表後、金融市場の反応は、9月FOMC会合で3回続けて0.75%幅での利上げが実施されるとの予想が若干ながら後退したことで、いったんは株高・債券高となった。しかし、米国が3連休に入ることもあり、積極的に持ち高を膨らましにくかったことや、欧州でロシアからのエネルギー供給が滞る懸念が、リスク資産に対するセンチメントを悪化させたことから、株価指数は前日比下げて週末の取引を終えた。
9月FOMC前に発表される、消費者物価指数(CPI)が焦点
先々週のジャクソンホール・シンポジウムでパウエルFRB議長が、コメントした通り、FRBは高止まりしているインフレ率をFRBの目標である2%水準に低下させることを最優先課題として判断行動するだろう。今後、入手するデータとその変化次第と前置きしているので、消費者物価指数(CPI)の動向に注目が集まる。ただ、余程のことがなければ、0.75%幅の利上げを実施するのではないだろうか。