中国では、新型コロナウイルスの感染が拡大を続けている。ついに、首都・北京市内の感染状況も悪化し、北京市保健当局の発表によると、4月25日の新規感染者は33人だった。
北京市では、過去1週間で数十人の感染が確認された。このため、北京市当局は25日に朝陽区で全住民の検査を開始し、他10地区と経済開発区にも対象を拡大した。北京市の人口約2,200万人のうち約2,000万人が検査対象となり、26~30日の間に3回のPCR検査を実施するという。
北京市の住民には、ロックダウンへの警戒感が高まっている。上海市で大規模に実施されたロックダウンの影響は、食料の調達にも市民が困難に直面するほどだったためで、スーパーマーケットでは食料品や日用品を買い求める市民の姿が多く見られる。因みに上海市では25日に217人、26日に171人の新規感染者が報告された
経済的には、北京でも、上海市のような厳しいロックダウンが実施されれば、中国経済の成長見通しは一段と下方圧力が掛かることになるだろう。ロックダウンによる新型コロナウイルスの封じ込め政策を厳格に適用し続ければ、経済コストが極めて高いことは明らかであり、経済的な打撃となるだろう。なぜ、これほどまでに徹底的にコロナを抑え込むゼロコロナ政策に固執するのか?
政策にも、手詰まり感が出てきている。パンデミックが始まった2020年には、中国政府は国内製造拠点での混乱を抑制し生産水準を高めて経済成長をプラスに維持した。金融政策でも、中国人民銀行は緩和政策を展開し、潤沢な流動性を供給し、金利を下げて企業活動を下支えした。しかし、現在の中国政府は、具体的な政策に欠けている。金融政策も、物価の上昇が続く中で、大胆な緩和策には踏み込めない。中国人民銀行は景気を支えると26日にあらためて表明したが、インフレ抑制を重視すると、刺激策に傾倒するわけにもいかないのである。
ゼロコロナと年5.5%前後の経済成長実現という政策目標は相反している。両立を実現する有効な政策カードが見当たらないという難しい環境だが、中国政府は、政策目標のバランスをどう取るか、この局面をどう乗り切るのだろうか?経済と市場の不確実性は増加している。中国株と人民元には引き続きダウンサイドの圧力が掛かるだろう。
ゼロコロナ政策の変更しかないと、筆者は考えるのだが。