予想を下回った非農業部門雇用者数 ~ 雇用市場の現状は?
10月2日、米労働省労働統計局は9月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は2.9万人増にとどまり、前月から伸びが鈍化し、市場予想を大幅に下回った。過去2カ月分も大きく下方改定され、8月は16.2万人増から13.3万人増へ、7月は2.1万人増から1万人減へ修正された。雇用者数の減少は今年に入って2回目で、7、8月の合計は速報値を6万人下回った。一方、過去3カ月の雇用増加数は月平均5.1万人と、2025年同期の2.3万人を上回っている。9月の伸び悩みと8月分の下方改定には、季節調整モデルが変動を増幅した影響も大きいと考えられる。失業率は4.2%と、前月の4.1%から上昇した。職を求めて労働市場に参入する人が増えたことが背景にある。
それでも、堅調とされてきた労働市場にわずかな変調の兆しが表れたことで、米連邦準備理事会(FRB)が10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げに踏み切るとの観測は大きく後退した。金融市場が織り込む10月FOMCでの利上げ確率は約2割にとどまり、発表前とほぼ同じ水準となった。
今回の統計は、労働市場で「採用も解雇も少ない」状態が続いていることを示している。人員削減が広範に増えている兆候はない。企業利益の堅調な伸びと底堅い国内需要を背景に、新規失業保険申請件数は57年ぶりの低水準で推移しており、失業者が急増する状況も想定しにくい。雇用の伸び悩み、失業率の小幅上昇、賃金上昇率の鈍化を踏まえれば、FRBが10月FOMCで追加利上げを選択する根拠は乏しいとみるべきだろう。市場の焦点はすでに物価動向へ移っており、なかでも最も重要な指標が消費者物価指数(CPI)であることは言うまでもない。
ただし、市場参加者の間では、エネルギー価格の高騰や供給網の逼迫に加え、米国とイスラエルによる対イラン戦争の逆風が強まり、年末から来年半ばにかけて雇用市場に支障が生じ始めるとの見方が根強い。
部門別では、医療部門が引き続き雇用増の大半を占め、1.7万人増加した。ただし、過去12カ月の月平均増加数3.3万人を大きく下回る。外来医療サービスと病院で雇用が増えた一方、看護・居住型介護施設では9,000人減少した。ハイチ出身の移民数十万人を対象とする一時保護資格(TPS)の終了が影響した可能性がある。建設業は1.1万人増、製造業は9,000人増だった。情報関連業は1万人、金融業は7,000人、それぞれ減少した。専門・ビジネスサービス業は、人材派遣業が1.09万人減ったことを受け、9,000人減少した。一方、レジャー・接客業は1万人増となり、卸売・小売業や運輸・倉庫業でも緩やかな雇用増がみられた。
平均時給は前月比0.1%上昇し、8月の0.3%上昇から伸びが縮小した。前年同月比でも3.0%上昇と、8月の3.1%上昇から鈍化した。失業率の上昇は、労働力人口が48万5,000人増加したことを反映している。これに伴い、労働参加率は8月の61.6%から9月は61.8%へ上昇した。家計調査に基づく就業者数は40.6万人増加した。
米クリーブランド地区連銀のハマック総裁は2日、9月の米雇用統計について、過去12カ月間で平均・毎月4.1万人の雇用が生まれており、この数値は雇用セクターのブレークイーブン推計値と概ね一致しており、雇用市場が引き続き安定的に推移しているとの見方を示した。そのうえで、今後の金融政策を決定する10月FOMCまでには、なお時間があり、さらに物価統計など多くの情報が得られるとして、適切な政策スタンスを決める時間は十分にあると語った。FRBは9月FOMCで、約3年ぶりに0.25%幅の利上げを決定したが、ハマック氏は早い段階から利上げを支持してきた。
10月FOMCを前に、市場はインフレ指標、特にコアCPIに注目することとなろう。