異例の反対票3票
米連邦準備理事会(FRB)は28─29日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を3.50─3.75%に据え置くことを決めた。FRBは昨年12月以降、政策金利を現行水準に維持しており、5会合連続で据え置かれた。ただ、12人の委員のうち3人が0.25%ポイントの利上げを主張して反対票を投じ、政策判断を巡る意見の隔たりも浮き彫りになった。反対したのは、クリーブランド地区連銀のハマック総裁、ダラス地区連銀のローガン総裁、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁。3人はいずれも、利下げを示唆する文言の扱いを巡って以前から慎重姿勢を示していた。
声明は景気の底堅さと高インフレを強調
FOMC声明では、インフレ率について「委員会が目標とする2%に比べて依然として高い」と指摘した。一方で、中東情勢を一因とする不確実性の高まりがある中でも、経済活動は堅調なペースで拡大しているとの認識を維持した。
声明はまた、生産性の伸びや設備投資が力強く、雇用の伸びも労働人口の増加におおむね見合っていると説明。失業率については「あまり変化していない」とし、6月16─17日の前回会合とほぼ同じ文言を踏襲した。
(参考)FOMC声明文(ロイターの抄訳に遷移します)
ウォーシュ議長、2%物価目標の堅持を強調
ウォーシュ議長はFOMC会合後の記者会見で、インフレ率が5年以上にわたって目標の2%を上回っていることに触れ、単月の経済指標で物価上昇がやや鈍化したとしても、問題が解消したとは判断できないとの考えを示した。その上で、「FRBはインフレ率を2%目標へ戻す取り組みを緩めることはない」と強調した。今後の政策運営について明言は避けたものの、「必要かつ適切と判断すれば、行動をためらうことはない」とも付け加えた。
また、一部の市場関係者の間で、FRBはインフレ目標を2%超に事実上引き上げているとの見方が広がっていることにも言及したうえで、ウォーシュ議長は「目標は1つしかなく、それは2%だ」と述べて、2%を超える暗黙の目標は存在しないと明確に否定した。
市場の利上げ観測には慎重な見方
前回6月会合以降、米国債利回りは大きく上昇し、市場では利上げの可能性が織り込まれていた。ウォーシュ議長はこうした市場の動きを歓迎しつつも、参加者はFRB当局者の発言やドットチャートに反応したのではなく、自らの判断で行動していたと説明した。そのため、市場が利上げを織り込んでいたからといって、FRBが実際の政策変更で追認する必要があるわけではないとの考えを示した。
9対3の決定、タカ派色の強まり示す
今回の決定が9対3となったことについて、ウォーシュ議長は「健全な政策決定プロセスの表れ」と評価した。「活発な議論を望んでいたが、その通りになった」と述べ、最終的な判断には大多数の支持があったと説明した。ウォーシュ議長の議長就任後初の会合となった前回6月のFOMCでは、全会一致で金利据え置きが決まっていた。就任初期のFRB議長がこれほど強い反対に直面するのは、1970年代以来である。市場関係者の間では、政策当局者の間でタカ派色が強まっているとの見方も出ている。
次回9月FOMC会合へは、雇用と物価指標が焦点
次回FOMCは9月15─16日に開かれる予定である。金融市場は、7月と8月の雇用・物価指標を踏まえ、6月の指標で示された物価上昇圧力の緩和が続くかどうかを見極める機会と受け止めている。FF金利先物市場では、9月会合での利上げ確率は足元で約57%と、今回のFOMC前にほぼ100%織り込まれていた水準からは低下した。一方で、中東情勢によるエネルギー供給リスクや、人工知能関連の設備投資を巡る物価押し上げ圧力は、利上げだけでは解決しにくいとの指摘もある。