受給バランスにも変化か?
中国による半導体製造装置の国産化が進んでいるとの報道を受け、半導体関連株には短期的に売り圧力がかかっている。特に、液浸型深紫外線(DUV)露光装置で高い市場シェアを持つASMLや、メモリー半導体で世界的に大きな存在感を持つ韓国勢に対し、「中国企業との競争が想定以上に早く強まるのではないか」との警戒感が広がっている。
報道によると、中国で開発された液浸型DUV露光装置は年内にも中芯国際集成電路製造(SMIC)、華虹半導体、長鑫存儲技術(CXMT)などの中国大手半導体メーカーに納入される見通しである。DUV露光装置は、シリコンウエハーに微細な回路を転写する重要装置であり、半導体の生産能力や技術水準を左右する。
これまでこの分野では、オランダのASMLが事実上の独占的な地位を築いてきた。中国が自国製装置の生産に踏み出したことは、将来的にASMLの中国市場での優位性を弱める可能性がある。
ただし、すぐに勢力図が大きく変わるわけではない。中国製DUV装置は、性能や信頼性の面でなお課題があるとみられ、量産に使える水準かどうかは今後の試験で確認する必要がある。初期の生産台数も今年は約5台、2027年でも約20台にとどまる見込みと言われ、短期的にはASMLの優位性が大きく揺らぐ可能性は限定的と考えるべきだろう。
ただ、市場が重視しているのは、足元の業績への影響よりも「中長期の競争環境の変化」である。米国などによる対中輸出規制で、中国企業は最先端の極端紫外線(EUV)露光装置を入手しにくくなった。そのため、中国にとってDUV装置の国産化は、先端半導体の自給体制を強めるうえでは、重要な一歩となる。
この懸念は、早速、韓国市場に波及した。7月28日、ソウル株式市場では半導体株を中心に売りが広がり、KOSPIは急落した。メモリー半導体大手のSKハイニックスやサムスン電子が大きく下げたことが、指数全体を押し下げた。
韓国の半導体株が売られた背景には、中国のCXMTが大型上場を果たしたこともある。投資家は、CXMTの現在の業績そのものよりも、上場後に資金調達力を高め、生産能力の拡大や技術開発を加速させる可能性を警戒している。将来的に中国勢がDRAMなどのメモリー分野で韓国企業に対抗する力を強めれば、価格競争やシェア争いが激しくなるおそれがある。
つまり、半導体株にとって今回の材料は二つの意味を持つ。第一に、ASMLのような製造装置メーカーは、中国での独占的な地位が将来危ぶまれるリスクがある。第二に、サムスン電子やSKハイニックスのようなメモリー大手には、中国勢の供給拡大によって競争が激化し採算を悪化させるリスクがある。
もっとも、現時点では中国製装置の性能や量産能力には不透明な点が多く、短期的な業績への影響は限定的とみられる。そのため、半導体株は当面、競争激化への警戒から値動きが荒くなりやすいものの、実際の影響は中国製装置の性能、納入台数、メモリー市場での供給拡大ペースを見極めながら判断される展開となるだろう。