一部報道によると、今年6月に石油輸出国機構(OPEC)加盟国11カ国が生産した原油量は、前月比で日量330万バレル増加し、日量1,943万バレルに達したという。OPEC加盟11カ国のうち湾岸加盟国が原油の生産を再開し始めたことが理由である。5月は、イラン戦争やホルムズ海峡の事実上の封鎖により、供給が停止し、2020年のパンデミックにより需要が崩壊した際の水準を下回っており、供給量は過去20年間で最も少なかった。なお、この計算からは、5月1日付でOPECを脱退したアラブ首長国連邦(UAE)は除外されている。
原油の増産幅が最も大きかったのはクウェートとイランだった。米国がイランの港湾に出入りする船舶を留め置いていたことで、イランは減産を強いられていたが、和平合意により、封鎖が解除されたことが背景にある。また、サウジアラビアとイラクも大幅に原油生産を拡大した。イランとの戦争の影響を受けないと見られていたナイジェリアやリビアも増産に転じた。
先週6月30日時点では、北海ブレント原油は1バレル=75.02ドルに下落し、週末の7月2日には1バレル=70.64ドルまで低下した。WTI原油は1バレル=67.72ドルまで下げており、前月比では約24〜27%もの大幅な下落を記録した。大幅な原油安により、世界的なインフレ圧力への懸念が後退することになれば、世界の金融市場やマクロ経済にとっては大きなポジティブ材料となるだろう。また日本にとっても、コスト低下により、コストプッシュ型のインフレ圧力が軽減される可能性が高まるだろう。原油安の動きは、企業の先行き不透明感を緩和させ、国内景気のマインド改善を後押しする。7月1日に発表された日銀の6月短観では、そうした良い流れを先取りして、大企業・製造業の業況判断DIが「プラス22」と約8年ぶりの高水準を記録している。ただ、あまりに価格が低下するとOPECプラスは増産のインセンティブを失うことも事実である。
備蓄放出などにより枯渇した在庫を水準訂正するために、来年に向けては需要が下支えされると考えられ、市場は再均衡に向かう可能性が高い。地政学的リスクへの警戒感はまだ続くであろうし、輸送タンカーの数が限られていることや、新たに積み荷を載せるためにホルムズ海峡に入るタンカーが回復するロジスティクスも、不透明であるなど、正常化には時間がかかる。2026年後半の原油価格は1バレル=80ドルを大きく下回ることは難しいのではないか。