マデュロ大統領を拘束し米国に移送
1月3日、米国は、ベネズエラに対して空爆を実施し、首都カラカスの軍事エリアおよび民間地域の一部を攻撃して、マドゥロ大統領夫妻を拘束したと発表した。同夫妻は米国に向けて船で移送され、米国で、麻薬テロの共謀、コカイン密輸の共謀、機関銃および破壊装置の所持、ならびに米国に対する機関銃および破壊装置所持の共謀などの罪に問われるという。
トランプ米大統領は、「マールアラーゴ」で開催した記者会見で、安全で適切かつ慎重な政権移行が実現するまでの間、米国がベネズエラを「運営する」と表明した。米軍の地上展開の有無について、トランプ大統領は適切なベネズエラ運営を確実にするためには、米軍の地上展開を「躊躇しない」とした。また、米国の石油企業をベネズエラに進出させ、数十億ドル規模で資本を投じて、石油インフラを修復し、収益性を実現すると述べて、石油関連の権益が狙いの一つであることを隠さなかった。ただ、どのようにベネズエラを「運営する」かについての詳細はほとんど明かされなかった。
トランプ政権は、第1次政権でも、マドゥロ大統領への圧力をかけてきたが、第2次政権では圧力を強化し、数カ月前からはマドゥロ政権がテロ組織を支援し、麻薬密輸に関与しているとしてマドゥロ政権に方針転換を迫ってきた。直近ではベネズエラ周辺海域で軍事力を展開し、制裁対象となった石油タンカーがベネズエラに入出港するのを阻止したり、麻薬密輸に関与したとされる船舶を攻撃したりした。また、ベネズエラの石油関連企業と取引する中国企業に対しても制裁を科した。これに対して、マドウロ政権は、トランプ政権の主張を否定し、米国の行動や圧力は違法な行為だと批判してきた。
軍事力の行使と現職大統領の拘束・米国への移送は、前例のない介入とも言える。今回の事態に対しては、ロシア外務省が、ベネズエラに対する武力攻撃について米国を非難し、さらなる緊張の激化を避けることが重要だとの見解を示した。中国も、米国によるベネズエラへの軍事攻撃とマドゥロ大統領の拘束について、「深い衝撃」を受けたと表明し、「主権国家とその大統領に米国が行った露骨な武力行使を強く非難する」とした。コロンビアのペトロ大統領は、国連安全保障理事会の開催を求めることを明らかにした。一方で、トランプ政権を支持するアルゼンチンのミレイ大統領らは、今回の軍事行動を歓迎している。欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表は、ルビオ国務長官との協議で、米国には自制を求めながらも、マドゥロ大統領には政権を維持する正当性がないとするEUの従来からの見解を改めて示した。
米国の出口戦略を考えると事態はやや複雑である。ルビオ米国務長官は、ベネズエラのロドリゲス副大統領と接触を続け、この先も民主政権への権限移譲について同副大統領の協力を期待していることを明らかにした。トランプ大統領も、米紙とのインタビューでも、ロドリゲス副大統領が、トランプ政権の望むように行動すれば、米軍を駐留させることはないと述べている。しかし、トランプ政権は、マドゥロ大統領が民主的な選挙で国民の支持を得ていないことを批判してきた。その政権の実質No.2だったロドリゲス副大統領が当面権力を掌握することについては、自己矛盾がある。加えて、ロドリゲス副大統領は、トランプ大統領の会見後に、ベネズエラ国家防衛評議会メンバー同席の下、国営テレビで演説し、米国によるマドゥロ大統領の拘束を「拉致」と表現し、「野蛮な行為」と非難した。また、同氏は、ベネズエラが二度と他国の植民地にはならないと宣言し、マドゥロ大統領の即時送還を要求すらした。
また、ベネズエラの野党指導者マチャド氏は、2024年の選挙で多数を獲得し、勝利を主張してきた野党候補ゴンサレス氏が「直ちに」権力を掌握するべきだと問題提起している。ゴンサレス氏は、公式集計とは別に行われた集計では勝者と見なされており、現在はスペインに亡命している。マドゥロ大統領の拘束は、ベネズエラと国民にとっては、大きな転機となる可能性があろう。