
金現物価格は一時1オンス=3,972.01ドル
10月7日、金現物価格は一時1オンス=3,972.01ドルと、史上最高値を記録した。最近の金価格の上昇は目覚ましいものがあるが、この動きは米国の追加利下げ観測や、経済の不透明感による安全資産としての需要の高まりが背景にある。7日日本時間午前7時30分時点では1オンス=3,970.59ドルで前日比0.3%高となった。金先物(12月限)でも前日比0.5%高の1オンス=3,994.10ドルとなり、一時は1オンス=3,997ドルの史上最高値を記録した。
各国中央銀行の動き
金を買いに回っている参加者の中で目立つのは、各国の中央銀行である。彼らは、自国の外貨準備をポートフォリオとして運用しており、その一部を金で保有している。金は、地政学的リスクや金融危機時などの有事の際に、価値が下がりにくい「安全資産」とされている。また、歴史的な経緯から、価値の保存手段と考えられており、各国中央銀行は金を大量に保有することで、自国通貨の信頼性に繋げるという側面もある。
そのなかでも、最大の金保有者は、中国人民銀行である。中国人民銀行が公表した今年9月末時点での外貨準備は3兆3,390億ドル(前月比165億ドル増)と事前予想を上回り、世界最大の外貨準備を誇る。中国人民銀行は2024年5月に一時金購入を停止したが、同年11月に再開して以降、11カ月連続で金を購入し、9月末の金準備は7,406万オンスを保有している。米ドル換算では2,832億9,000万ドルに達する金を保有している。
人民銀行は、多額の外貨準備の保有について、米ドルへの依存度を下げる動きを強めている。米ドルのポートフォリオが大きいと、米国の金融政策や制裁に外貨準備の価値が左右されることとなり、その影響を限定する手段として、金の比率を高めてきた。最近の金買いはドル離れが加速していることの裏返しでもある。
ちなみに、中国やロシアは、速いスピードで米ドル離れ⇒金へのシフトを進めており、今後5年間で世界の中央銀行の多くが金の保有比率を高め、米ドル準備高を減少させると言われている。
過去2年で価格が約2倍となった金だが、米FRBの追加利下げが期待が強まっていることや、経済の先行き不透明感が強まっていることから、安全資産への需要は根強く、価格は下方硬直性が高まるだろう。まさに、不透明な時代における、安全資産としてその存在感は増すのではないか。