
労働統計局がベンチマークを下方修正
金融市場は9月11日に発表される予定のCPI(消費者物価指数)を注目している。いっぽうで、9日には労働統計局が、雇用者数の年次ベンチマーク改定にあたり、統計データが91.1万人分、下方修正される可能性があると発表した。これだけの下方修正幅が出るのは過去最大で、1カ月当たりでは7.6万人近い改定となる。なお、確報値の発表は来年2月に予定されている。
改定前の段階では、雇用者数は今年3月までの1年間に約180万人増(季節調整前)だった。月平均では14.9万人増だった。しかし、今回の年次改定により、1カ月当たりの雇用の伸びはその約半分だったことになる。そして、ここ数カ月に労働市場が一段と減速したことを示唆することになる。雇用者数はほぼ全ての業種、そして大半の州で下方修正された。特に、卸売業・小売業での引き下げ幅は大きく、次いで娯楽・ホスピタリティー業の下げ幅も目立った。またプロフェッショナル・ビジネスサービスと製造業も下方修正が顕著だった。
つまり、雇用市場は、当初の推計データで示されてきた実態よりもかなり弱いということである。そうだとすれば、パウエルFRB議長がジャクソンホール会議で語った通り、雇用市場におけるリスクの高まりを認め、FOMCが利下げを判断するシナリオの可能性は高まったということになる。
債券市場では、来週の9月FOMC会合で利下げが決定されるとの予想が大勢を占めている。さらに、弱い雇用統計データは、利下げが単発では終わらないとの期待につながる。一部では、9月会合で0.50%の大幅利下げを期待したポジションも構築されている。明日の統計次第ではあるが、インフレ圧力の後退が顕著となる可能性は低く、実際の下げ幅は0.25%にとどまるだろう。
5日に発表された8月の雇用統計など、先週来、米国景気の減速を示す経済指標が相次いだことから、10年米国債利回りは4.09%をつけ、約5カ月ぶりの低い水準に下がった。7月のピーク時には4.50%に近いところまで上昇していた。政策金利の動向に敏感な2年米国債利回りは8日に一時3.48%をつけ、3.50%を割り込んだ。利下げ期待は当面続くだろう。