
トランプ大統領が、一方的に解任を発表
トランプ米大統領は8月25日、米連邦準備制度理事会FRBのリサ・クック理事に、解任を通告する文書を自らのSNSに投稿した。クック理事には、ミシガン州アナーバーの物件で住宅ローンを組んだ際に、その所在地を主な居住地と申告しておきながら、2週間後にはジョージア州の別の物件でも同様の申告をして条件の有利な住宅ローンを2重に取得したとの疑惑が掛けられていた。事実とすれば、制度的にはこれは不正な住宅ローン利用ということになるのだが、これを理由にトランプ大統領はクック理事に辞任を求めていた。同理事は、辞任を固辞してきたが、トランプ大統領はついに決断を下した形である。
トランプ大統領が投稿した文書には、「合衆国憲法第2条および連邦準備法に基づく大統領の権限により、あなたはFRBの理事の職を即時に解かれる」と記されていた。大統領は「正当な理由」がある場合にのみFRB理事を解任できるとされる。
クック氏は学者出身で、民主党のバイデン前大統領の指名で2023年9月に就任した。黒人女性初のFRB理事で、任期は2038年まで残されていた。トランプ大統領の決断は、FRBへの圧力を再び強めるものである。ここ数カ月の間に、トランプ大統領は、FRBが金利を据え置いていることに不満を隠さないでいるが、金融政策運営のみならず、FRB本部ビルの改修を巡り、パウエル議長に責任を負わせようとするなど、圧力を強めている。クック氏が辞任すれば、FRB理事ポストに空席が生じ、その指名権を行使する人事を通じて、影響力を行使する余地が広がる。
FRBの運営について定める連邦準備制度法の第10条には、理事会メンバーを解任できるのは「正当な理由」がある場合と規定されている。米連邦最高裁判所も5月に、パウエル議長を含む理事会メンバーを正当な理由なく解任することは認められないとの見解を示した。今回の判断が、即座に辞任につながるかは不明だが、2025年5月に議長としての任期満了を迎えるパウエル議長にとっては、トランプ政権からの政治的な圧力は一段と悩ましいものになるだろう。