
3年間で最大の伸び
8月14日に発表された7月の米国生産者物価指数PPI(最終需要向け財・サービス)は、前月比0.9%増加し、6月の横ばいから大幅に上昇した。前年同月比では3.3%の上昇となり、6月の2.3%を大きく上回った。過去3年間では最大の上昇幅だった。これは、関税に起因する輸入コストの増加分が企業によって価格へ転嫁されつつあることを示唆している。
サービス部門のコストは1.1%増加し、2022年3月以来の高い伸び率を記録した。特に卸売業および小売業の利益率が2.0%上昇し、機械・機器の卸売業で顕著な伸長が見られた。食品とエネルギーを除く財価格も0.4%上昇した。
今回のPPI統計からは、上半期に消費需要が減速したにもかかわらず、関税関連コスト上昇への対応として企業が財・サービス価格の調整を図っている様子が読み取れる。今後、関税負担の消費者転嫁度合いが物価上昇動向を左右する重要な要素となろう。
これまで米国企業は関税によって上昇したコストの大部分を自社で吸収してきたが、輸入品コストの増加で利益率が圧迫されていること、また主要国との関税率も合意形成によりはっきりしてきたことから、今後、数カ月掛けて関税分が消費者価格に転嫁されていく可能性が高いだろう。そうなると、2025年下期には、消費者物価が上昇する圧力が高まり、インフレ懸念が再度強まるリスクにつながる。
8月12日に先行して発表された7月米消費者物価指数(CPI)では、関税分の価格転嫁が緩やかであったことが示された。そのため、雇用市場の減速傾向も踏まえ、連邦公開市場委員会(FOMC)が来月会合で利下げに踏み切るとの観測が強まった。ただし、今回のPPI統計では、それとは反対に、インフレ圧力再燃リスクが残存する可能性が指摘できる。
政策判断は困難に
米連邦準備制度理事会FRB首脳は、今年後半に輸入関税がインフレに与える影響について、おおむね一時的な調整なのか、持続的なものなのかで、判断が割れている。トランプ政権が利下げへの要求を強める中、この見極めは、9月FOMCでの政策変更判断に影響を及ぼす。
7月PPIがインフレ加速を示唆したことから、市場では早期利下げ観測が後退し、米国債価格が下落(利回り上昇)、10年米国債利回りは4.29%に上昇した。米ドル金利上昇を受け、円は対ドルで下落した。米国株式市場は下落して始まったが、その後下げ幅を縮小した。短期金融市場では、9月の0.25ポイント利下げ織り込み確率が約8割程度に低下した。