
ボウマン副議長は年内3回の利下げを支持
ボウマンFRB副議長は、8月8日、講演において、雇用市場の動向を踏まえ、複数回の政策金利引き下げが適切であるとの認識を示し、年内に三回の利下げを実施するべきと明言した。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、今年に入ってから、インフレ圧力を注視し、政策金利を据え置く方針を継続している。ボウマン副議長も、6月までは、この方針を支持してきた。しかし、七月FOMC会合ではウォラーFRB理事と共に0.25%幅の利下げを主張し、反対票を投じた。両氏はまた、反対票行使の根拠として雇用市場の軟化を挙げ、公式に声明を発表する異例の行動を取った。
ボウマン氏は次回9月に開催予定のFOMC会合で利下げを再開することを提案した。雇用市場の過度な悪化を抑止すること、雇用市場が更なる弱化を示した場合にFOMCが急激な政策修正を余儀なくされる事態に陥るリスクを軽減することを理由として挙げた。そして、トランプ政権の関税賦課による物価上昇が、持続的なインフレ率の上昇要因となるリスクは低いとも指摘した。
これは、7月FOMCで、票決としては金融政策を維持すると決めたものの、意見は割れていたこと、そのうえ、それに異を唱えるような行動を複数の理事が採ったことになる。いわば、反乱を起こしたようなものである。加えて、7月雇用統計の内容が、雇用市場の軟化を示唆したことで、こうした行為が正当化されかねない。トランプ大統領のFRBに対する圧力も、そうした行動を助長したかもしれない。
新理事にミラン氏
また、トランプ大統領は、退任するクーグラーFRB理事の後任にミラン氏を指名することを発表した。ミラン氏はハーバード大学で経済学博士号を取得、ヘッジファンド会社を経て、CEA委員長を務めている。2024年3月には連邦準備制度運営への批判的見解を示した論文を発表し、連邦準備制度の改革案を提言したこともある。同論文では、金融政策分野と銀行規制・監督業務の完全分離を主張し、後者についてはFRBから切り離すべきだとの法改正提言を行った。また、「マールアラーゴ合意」として多国間協調によるドル安誘導策も提案している。トランプ大統領の二期目就任後からのドル安傾向を見れば違和感はないが、やや危なっかしいところはある。
金融政策に関しては、基調インフレ率が2%水準へ持続的に収束する流れにあり、総需要が鈍化し、雇用市場に脆弱性が認められる状況となってきており、FOMCは雇用市場のリスク管理に注力すべきであるとの考えを示している。関税についてもインフレに対し恒常的なショックをもたらす確率は低く、物価安定に対する上振れリスクも減少しているとの意見を示しており、早期の利下げに賛成するものと思われる。
パウエル議長をはじめとする「利下げ慎重派」にトランプ政権からの圧力が強まる中、FOMCは、トランプ大統領の意見が反映されやすい理事の構成に代わりつつある。7月雇用統計のサプライズもあり、今後の金融政策のかじ取りはますます難しくなるだろう。