
不透明感薄らぐ
日米貿易合意の成立で日本銀行の利上げ余地は拡大
先週、日米政府間では、4月から続いていた貿易協議で合意した。自動車を含めた日本製品に対する関税率が一部の例外を除き15%で決着したことで、高い関税賦課とサプライチェーンの変更を迫られるとの不透明感から、悩ましい状況に置かれていた多くの日本企業にとっては、ポジティブな材料となるだろう。実際、財界トップは日米合意を「自動車を含む関税の全面引き上げ回避は、企業現場にとって重要な防波堤となる」などの評価が大半で、肯定的な見解が示されている。
関税政策の先行きについて不透明感が和らいだことで、企業活動の不確実性は低下する。このため、企業の投資判断や価格戦略が収益や賃上げにプラスに働くことが期待できる。そして、そうなると関税の影響を見極めたいとして金融政策の変更に慎重な姿勢を取っていた日本銀行の判断も変更される可能性が指摘されている。
7月23日に、内田真一副総裁は記者会見で、「企業行動を決定する上で大きな不確実性のひとつが減少した」と述べた。依然として世界経済の関税を巡る不確実性は大きく、日米合意がどのように実行に移されるかも明確でないことから、今週7月30~31日の金融政策決定会合で政策金利が変更されることはないと考えられる。今回の決定会合では、新たな経済・物価見通しが審議し、政策判断に重視する基調的な物価上昇率などを確認する予定である。現段階では物価が2%目標に向けて上昇する見通しに変更はないだろう。しかし、企業収益や賃上げへの影響を見極め、日銀の物価目標である2%達成に到達する可能性が高まると日銀が判断した場合には、利上げを実施する可能性は俄然、高まるだろう。
金融市場では、日銀の追加利上げが年内10月に行われるとの見方が強まった。来年1月も含めると、7割程度の可能性に高まった。