
悪い円安が進行する兆しも
7月20日(日)に予定されている参議院選挙は、今後の政局と金融市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。金融市場では、自民党・公明党連立与党による参院過半数割れが一定程度織り込まれているものの、開票直後には円長期金利の上昇および円安基調が一段と強まるリスクが意識される。メインシナリオとしては、石破首相は選挙後も辞任せず、少数与党として政権を維持する展開が想定されている。この場合、為替市場の円安トレンドはいったん小休止となる可能性が高い。しかし、野党主導の政策転換や財政悪化観測が台頭した場合、特に消費減税論議が浮上すれば、財政健全性への懸念から円資産売却圧力が強まることが予想される。
また、与党の敗北の程度によっては、石破首相の辞任と新体制への移行といった政治的リスクが高まる。結果として、財政拡張期待に伴う金利上昇・円売りが進展し、ドル円相場が150円台を試す展開となる可能性も否定できない。その水準到達時には、日本銀行による利上げ観測が強まり、円安是正への思惑が台頭しやすい。一方、与党が過半数を維持した場合には、円資産の買い戻しが顕著となるだろう。
加えて、日米間の貿易交渉も依然として市場のワイルドカードであり、8月1日の交渉期限が迫る中、進展状況が注視される。さらに、パウエルFRB議長の解任観測が市場で浮上した場合には、ドル円の上値抑制要因となり得る。
総務省が7月18日に発表した6月の全国消費者物価指数は、コアCPIが前年同月比3.3%上昇となり、7カ月連続で前年比3%台の上昇率を維持した。エネルギー価格の低下は物価の押し下げ要因となり、前年比上昇率では2013年1月以来の高水準だった5月の同3.7%から、4カ月ぶりに鈍化し上昇幅が縮小した。ただ、日銀の物価目標である2%を39カ月連続して上回っている。
電気料金・ガソリン等エネルギー項目は、原油などの資源価格の下落を背景に前年比2.9%上昇と増加幅が抑制された。一方、大手通信事業者による料金プラン改定を受けて携帯電話通信料は11.9%上昇し、コアCPIを押し上げる要因となった。コアCPI構成品目中、生鮮食品を除く食料は8.2%上昇と2023年9月以降最大で、コメについては100.2%上昇したが、この伸び率は23カ月ぶりに前月を下回った。コメ価格は8カ月連続で過去最高値を更新していた。生鮮食品・エネルギーを除く「コアコアCPI」は3.4%上昇となった。3%台の推移はこれで3カ月連続である。総合CPIは3.3%上昇し、伸びが鈍化した。賃金動向の影響を受けやすいサービス価格は1.5%上昇と2023年12月以来の高水準となった。春闘での賃上げ率が2年連続で5%台に達したことから、賃金上昇が物価に波及する効果が、出ているのであろう。この傾向が持続するかは注目しておきたい。
日本銀行は今月30日および31日に金融政策決定会合を開催する。主にコメ価格の上昇を反映して、2025年度のコアCPI見通しは上方修正されるとの観測が浮上している。しかし、金融政策は据え置きと見ている市場参加者は多いようである。日銀の審議委員の間では、足元の情勢を精査する姿勢を維持し、米国の関税政策の動向を見極める必要があると判断するだろう。今回の政策決定会合での利上げは行われないとの予想である。