
暗号通貨の規制見直し進む
7月17日、米国議会下院は、ステーブルコイン規制法案を可決した。採決結果は賛成308票、反対122票だった。同法案は、すでに上院では可決されており、トランプ大統領が署名すれば成立する。
(追記:トランプ米大統領は7月18日、同法「ジーニアス(GENIUS)法案」に署名し、成立した。)
この法案は連邦および州によるステーブルコインの監督義務と、24時間対応での越境送金枠組みの整備を盛り込んだ内容となっている。なお、下院は同日に暗号通貨市場構造法案も可決しており、今後、上院で審議される。
トランプ政権は『暗号資産』推し
暗号通貨は、過去に交換業者の経営破綻やハッキングなどで、信頼を失った局面もあり、普及には苦労してきた。暗号通貨交換業者などは、昨年の大統領選挙や米国議会選挙で、親暗号通貨派の議員への支援に多額の資金を投じ、ロビー活動も活発化させてきた。トランプ大統領や共和党指導部も、選挙資金の提供元として、業界団体の活動を支持してきたという経緯がある。
この法案の成立により、決済の迅速化やコスト削減、2,650億ドル規模のステーブルコイン市場に法的裏付けが与えられるとされている。シティグループは、この市場が2030年までに3.7兆ドル規模に拡大する可能性をレポートした。
SECも規制の見直しに
下院で法案が可決されたことを受けて、米証券取引委員会(SEC)は技術革新を促進するための規制免除措置を検討していると、アトキンスSEC委員長が明らかにした。
具体的には、トークンを使った送金などの取引手法を認める例外措置や、トークン化された証券システムの構築を支援する措置などが含まれるようである。さらに、アトキンス氏は、SECとして暗号資産分野についてのより明確な規則を策定するよう取り組む意向も示した。米大手金融機関の一部には、米国株や未上場企業のトークン化を検討しているところも出てきていると言われている。
アトキンス氏は、「今後の展開を正確に予測するのは難しいが、資産はブロックチェーン上へ移行しつつある」と明確に述べた。
なお、アトキンス委員長は、トランプ大統領によって指名され、規制の厳格化を進めた前任のゲンスラーSEC委員長とは異なり、暗号資産規制の全面的な見直しを進めてきた。
今回のステーブルコイン法案の成立は、米国が暗号資産の中心地となるための重要な一歩であり、この一歩は非常に大きな意味があるだろう。