
ベッセント財務長官が明言
7月15日ベッセント米財務長官は、米テレビ局とのインタビューで、次期FRB議長選びが既に始まったかを問われ、「正式なプロセスが既に始まっている」との認識を示した。
ベッセント氏はまた、パウエル議長が2026年5月の任期満了時に、議長職を退くほか、FRB理事としても退任すべきだとの考えを示した。金融市場では、議長を退任しても、理事としてFRBに残ることは理論的に可能との解釈がある。パウエル議長も、理事としてFRBに残る可能性を尋ねる質問には、繰り返し回答を拒んでいる。このことが、次期議長はトランプ大統領が指名するものの、パウエル議長が理事としてとどまり『影の議長』として影響力を行使するいう『二重構造』が生まれるとの臆測につながっている。ベッセント財務長官は、退任した議長がFRBにとどまるのは、市場に大きな混乱を引き起こすとして、それを牽制した形である。
解任はないが・・・
パウエル議長に対する政治的な圧力はこのところ一段と強まっている。トランプ大統領は、繰り返し『利下げ』を要求している。しかし、パウエル議長は、インフレ圧力が緩和しない現状では、利下げ判断は正当化されないと慎重な姿勢を変えていない。過去の判断も含めて、FRBやパウエル議長は、いくつか大きな誤りを犯したとして批判している。
議会共和党からは、FRB本部の改修費用が膨張したことに関して、パウエル氏に非があるとする批判がでており、議長を解任する法的な論拠になり得ると主張する議員も一部にいる。ハセット国家経済会議(NEC) 委員長は、トランプ大統領にFRB議長を解任する権限はあるのかとの質問に対し、「現在検討されている問題だが、正当な理由があれば、解任する権限はあるだろう」と語った。
ただ、ベッセント財務長官は、それでも、トランプ大統領が「パウエル氏を解任しないと何度も」言っていると強調した。おそらく、FRBの独立性を重視する金融市場の懸念が念頭にあるのだろう。
インタビューでは、また、ベッセント氏自身が次期FRB議長に就任することを打診されたことはなかったかとの質問に、自分は「決定プロセスに関与している」ことに触れたのみだった。そして、「議長の選定はトランプ大統領の判断であり、大統領のペースで動くだろう」と続けた。後任については、素晴らしい候補が多数いると述べた。
トランプ大統領は、ベッセント財務長官が次期FRB議長候補の1人かどうかとの記者団の質問に対し、ベッセント氏について、「彼は選択肢の一つだ。非常に良い」と発言をしたうえで、最有力候補なのかとの質問に対しては、「彼の財務長官としての仕事ぶりを私は気に入っているため、FRB議長に据えることはベストの選択肢ではない」と語った。