
6月米国消費者物価指数(CPI)は事前予想を下回る
6月の米消費者物価指数は、食品とエネルギーを除くコア指数が前月比で0.2%上昇、前年同月比では2.9%上昇だった。総合CPIは前月比0.3%上昇で、前年同月比では2.7%上昇だった。
今回のCPIからは、企業が追加関税の賦課に伴うコストの一部を、消費者に転嫁し始めている状況がうかがえる。玩具など関税措置の影響受けやすい品目は2021年4月以来の大幅上昇となった。家庭用インテリア用品とスポーツ用品は、2022年以来の大きな伸びだった。家電も約5年ぶりの高い上昇率を記録した。ただ、新車と中古車の価格は下落し、コアCPIの伸びを抑えることに寄与した。
自動車を除くとコア財価格は0.55%上昇と、21年11月以来の大幅上昇となった。食品とエネルギーを除いたコアの財価格は前月比0.2%上昇で、5月は横ばいだったことに比べると上昇が見られた。
一方、こうした価格転嫁の影響が、消費者段階の広い範囲で物価の上昇につながっている証拠というほどに、CPIは上昇していない。企業の間では追加関税発動を控えて在庫を積み増していたことや、価格転嫁しないでコスト上昇分の一部を吸収する動きもある。そうなると物価への影響は限定される可能性はあろう。
公表されているFOMC議事要旨によると、FRB高官の間でも、関税が物価に及ぼす影響が一時的なのか、より持続性があるのかを巡って意見が分かれている。現時点では、追加関税の影響はまだ見えてきておらず、見解が相違している
7月末に開催されるFOMC会合では、さらなるデータを見極めようとする主張が、利下げを検討しようとする意見を押し切ると予想されているが、物価に明確な上振れ圧力が見られない状況が続けば、9月FOMCでは利下げを求める意見が支持を得る可能性が高まるのではないか。これまでタカ派だったボウマンFRB副議長も7月の利下げを示唆するなど、ハト派に鞍替えしたが、このようなサプライズはあるかもしれない。
トランプ大統領は再び利下げを要求
コアCPIが予想された水準を下回る状況は5ヶ月続いている。このことは、追加関税が消費者物価に及ぼす影響について、議論を呼ぶことになる。トランプ大統領はCPI発表後に、「消費者物価は低い。政策金利を直ちに引き下げよ」とSNSに投稿、利下げを要求した。
金融市場ではCPI発表後、米国債相場は下落した(利回りは上昇)。年内2回の利下げを織り込んでいた短期金融市場の利下げ期待が後退し、FRBが当面は金利を据え置くとの観測が広がった。10年米国債利回りは4.48%に上昇した。30年米国債利回りは5.01%をつけ、今年6月以来の5.00%台乗せとなった。米国債利回りは長期物ほど上昇した。債券利回りの上昇を受けて、為替市場では米ドル買いが優勢となり、上昇幅を拡大した。ドル円は1ドル=149円台に乗せる場面もあった。S&P500指数が一時、史上最高値を更新したが、その後は金利上昇を嫌気して下げに転じ、前日比0.4%安で引けた。ナスダック総合指数は、中国向けの半導体輸出が認可されるとの報道が好感され、前日比0.18%高とプラス圏で取引を終えた。