
初の合意事例
5月8日トランプ大統領は、米国と英国が貿易についての枠組みで基本合意に達したことを記者会見し「うれしく思う」と述べた。相互関税の発表後、米国が貿易に関して他国との協定で合意したのは英国が初めてのケースとなる。
米英間の関税は10%で、英国産の自動車10万台にも適用される。英国側はエアラインが、ボーイング社製航空機を購入し、米国の対英赤字削減を図るという。また、英国は米国からの輸入品の税関手続きを迅速化し、農業、化学、エネルギー、工業製品の輸出に関する障壁を削減する。ただ、今後「数週間」にわたり、引き続き交渉が行われる予定で協定の詳細については、未決定の部分も多い。トランプ大統領は、この合意が、米国産品への障壁を下げ、英市場へのアクセスを拡大する「突破口」になると成果を強調、米国の輸出品の市場アクセスが数十億ドル拡大するうえ、農業分野では、米国の牛肉、エタノールなど、優れた米国農家が生産するほぼすべての製品の英国市場へのアクセスが、劇的に改善すると述べた。スターマー英首相も、電話でこの記者会見に参加し、「これは英米間の貿易を促進し、雇用を保護するだけでなく創出し、市場アクセスを拡大することになる」と述べた。
米英貿易協定の成立は、今後、米国が他の国との合意形成の内容やあり方を示す手がかりとなる可能性があると評価できる。例えば、英自動車メーカーはトランプ大統領が輸入自動車に課すとぶち上げた25%の関税率よりも低い10%の関税で、米国に10万台の自動車を輸出できる。英ロールス・ロイス社のエンジンと航空機部品は、関税なしで米国市場に輸出可能となる。
実は、米英間には懸案少ない
一方で、英国は経済規模が小さく、米国の対英赤字は相対的に小さく、実質的に報復するという選択肢がないとの指摘もある。また、日本や韓国から米国に輸出される自動車の販売数は英国の10倍以上にのぼり、両国の対米輸出全体の約3分の1を占めている。日本政府は関税の完全撤廃を求めているがこれは高いハードルとなる可能性が高い。自動車に対する25%の関税が引き下げられる可能性はあるものの、大きな希望を抱かせるかといわれれば厳しいのではないか。
米英間の合意は、金融市場にとっては、ややポジティブな材料と受け止められた。株式相場は上昇、債券相場は小幅下落した。S&P500指数は一時前日比1.5%上昇した。