
4月9日午前0時1分に「相互関税」が全面的に発動
米国への全輸出国・地域を対象に基本税率10%の関税を課す措置は、4月5日に発動していたが、今回は対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象とした上乗せ税率が適用された。
欧州連合からの輸入品には20%の関税が課され、日本への関税率は24%、アジア諸国にも大幅な上乗せ関税が適用され、カンボジアは49%、ベトナムは46%が課される。中国に対する関税率は、合成麻薬フェンタニルの米国への流入に関連して先に課した懲罰的な関税20%と、9日に始まる34%の相互関税、米国産品に対する中国の報復関税(34%)に対抗する50%の追加対抗関税が合算され104%に達する。
米国の関税率は100年強ぶりの高水準に引き上げられ26%程度になる。既に中国が報復措置に踏み切ったことで、米中間は、全面的な貿易戦争の様相を呈してきた。世界の貿易秩序は、大幅に塗り替えられ、世界経済には、想定していなかった多大な影響が及ぶ。大規模で大幅な関税賦課によって、世界経済の成長は、大きなリスクにさらされようとしている。
交渉の機会?
一方で、主要同盟国が関税措置の軽減を請い、トランプ大統領に交渉の機会を求めていることには歓迎する意向を示した。しかし、貿易赤字の解消がそう簡単に見えるものかは疑問であり、何処を落とし所に『ディール』を取りまとめるつもりなのかも見えない。米国が賦課する関税の軽減を望む貿易相手国・地域が、交渉により対米貿易障壁の削減に応じ、トランプ大統領はそれを受けて米関税率の引き下げを認めることが想定されているのだろうか?今後の展開は、不透明なままである。
報復合戦も
関税措置に屈しない姿勢を示す国も多い。中国は「最後まで闘う」として米側の圧力に屈しない姿勢を表明した。李強首相は、「外的ショックに十分な対抗手段」があると自負した。米中という二大経済大国間での貿易戦争は長期化する可能性が高まっている。中国政府は、9日には、米国との通商に関する「白書」を発表した。この白書には、米国は「自らがまいた種の報いを受ける」と書かれている。ただ、今回は具体的な対抗措置を発表せず、不気味な沈黙を保っている。
カナダは9日の米相互関税発動と同時刻に、3日に発動した米国の25%の自動車追加関税に対抗して、米国製自動車に同率の輸入関税を課す報復措置に踏み切った。欧州ではフランスとドイツが相互関税に対して、米国への強硬な対応を議論している。
これで終わりではない
トランプ大統領は、相互関税にとどまらない追加関税も予定している。医薬品への輸入関税も、近日中に発表される予定で、他には、木材や半導体へも関税を賦課することを示唆している。
トランプ大統領が課した関税は、本当に国内の製造業を復活させ、米国経済の発展につながるのかも、見えてこない。関税によって、消費者物価が上昇し、消費が後退することにつながりはしないか、懸念の声は多い。