
景気後退とインフレが同時に?
3月に入って発表された米国の経済指標は、ミシガン大学の消費者マインド統計やアトランタ連銀のGDP予測モデル、PCE個人消費など、いずれも先行きの不透明度を高めるものだった。さらに、リスク選好度の悪化と、企業収益の悪化懸念、関税戦争による予測不可能感は、安全逃避需要を支えている。
トランプ大統領が推し進める通商政策について、米国民や米国企業は不安を強めている。しかし、トランプ大統領は先週末29日のTVインタビューでは、自動車関税への対応で外国の自動車メーカーが値上げを行ったとしても自分は「全く気にしない」と強弁した。4月2日の相互関税については、実施をこれ以上遅らせるつもりはないと言い切った。不安な声は届いていないようである。関税戦争のエスカレートが世界経済の停滞とインフレ圧力を増幅することへの警戒感を高め、市場参加者のモメンタムは大きく変化している。
金融市場はリスク回避へ
株式から債券へのマネーシフトがみられ、金に至っては史上最高値を更新している。ただ、景気が減速する中で、物価が上昇するというシナリオは、債券相場にとっても難しい局面であり、加えて、長期債には、連邦債務の問題が意識されやすく、利回り曲線は長い期間ほど高くなりがち、すなわち買い進みにくい。
先週、10年米国債利回りは前週比変わらずの4.25%で取引を終えた。米30年米国債利回りは4.63%だった。一方で、2年米国債利回りは3.91%と低下した。短期債利回りは年初来最低水準にある。金融市場は、今年9月までに2回、0.25%/回の利下げを織り込んでいる。
米国株式市場では、先週末の3月28日には、S&P500指数が前日比2%安の水準まで下げて、年初来で3月10日の2.7%安に次ぐ大幅な下げ幅を記録した。消費者センチメントが悪化している中、自動車関税や相互関税など、各種関税による措置はインフレを煽るとの懸念が再燃し、リスク資産は売られがちとなった。特に、ハイテク株には売りが目立ち、エヌビディアや「マグニフィセント・セブン」、米ソフトウエア開発パランティア・テクノロジーズ、ソーシャルメディアの米レディットなどは売りにさらされた。市場参加者の中にも、過去2年間にわたり勝ち組だった銘柄に対する売りを加速させている。
本稿でも繰り返し指摘しているが、消費者心理を示す指標は悪化しており、長期のインフレ期待も32年ぶりの水準に上昇している。金融緩和期待も持ちづらい状況である。そして、4月2日には、「相互関税」の実施が発表される。関税はインフレを加速させ、世界経済の成長を損なうと見るべきで、リスク選好度は低くならざるを得ない。市場参加者は楽観的にはなれないだろう。株価は、引き続き下げ方向に要注意であろう。
今週は米国雇用統計、パウエル議長講演に注目
パウエル議長は、先々週、関税に起因するインフレへの影響は一過性のものに終わる可能性があるとの認識を示した。しかし、先週のFRB高官発言は、関税の規模が拡大し、他国からの報復関税が広がれば、インフレ圧力は長続きし、当局としては金利を維持せざるを得なくなることを滲ませる発言も出てきた。見通しは難しい。
今週は、4日金曜日の米雇用統計が注目を集める。また、その発表直後にパウエルFRB議長が経済見通しについて講演を行う予定である。クーグラーFRB理事やジェファーソン副議長、クック理事、バー理事とFRB高官の講演が、多く予定されている。
日経平均株価も『調整局面入り』?
海外市場にも、不安の連鎖は拡大している。31日の東京株式相場は大幅下落し、日経平均株価は前営業日比4.05%下げ、35,617.56で引けた。TOPIXは前営業日比3.57%安の2,658.73で取引を終えた。機械や精密機器など輸出関連や鉄鋼を含む素材、海運といった海外景気敏感業種に売りが先行し、東京証券取引所の全33業種が下落した。
日経平均株価は昨年12月高値からの下落率が10%を超え、テクニカル面で「調整局面」入りとされる水準まで下げた。第1四半期で見ると7%下落となり、2020年第1四半期に記録した20%安以来の下落率となる。