
極右・極左政党の躍進も
2月23日に実施されたドイツ連邦議会(下院)選挙では、保守連合キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が得票率28.5%で第1党となった。24日、メルツCDU党首は、連立政権樹立に向けて迅速に行動する考えを強調した。
今回の総選挙では極右と極左の政党が躍進した。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は20.8%と得票率を伸ばし、第2党に躍進した。AfDは、既存政党への批判の受け皿となったことや、トランプ米大統領やイーロン・マスク氏などから支持を得たことも勝因だろう。ただ、主要政党はAfDとの協力を拒んでおり、連立の枠組に入ることは想定されていない。
第1党となったCDU・CSUは早急に政権を樹立したい考えで、連立の交渉相手は第3党となったショルツ首相の中道左派「ドイツ社会民主党(SPD)」が最有力とみられている。メルツCDU党首は、記者会見で「われわれが最も懸念しているのは、欧州諸国やウクライナ抜きで、ロシアとウクライナ問題で合意しようとする(トランプ米大統領の)試みだ」と指摘し、米国に対して、同盟国に背を向けないよう警告した。一方で、欧州諸国には、防衛力強化の必要性を呼びかけた。ウクライナ和平を巡って、ロシアが米国に急接近する中、世界情勢は流動化しており、EUにおけるドイツのリーダーシップが求められる状況で、与えられた時間は限られている。
ただ、連立協議は難航すると見られる。中道左派「ドイツ社会民主党(SPD)」とは、特に移民問題を巡る政策で違いが際立っており、折り合いをつけられるかどうかが焦点となる。
また、極右・極左政党は今回の躍進により、憲法改正を阻止するのに十分な議席を有することとなった。極右勢力は、国家の借入制限緩和には難色を示している。左派政党は、借り入れ拡大そのものには反対していないが、借り入れた資金を再軍備に充てることには反対の姿勢を見せている。欧州の安全保障強化に必要な防衛費増額への要求は高まっているが、国家債務を制限する債務ブレーキの縛りをどう紐解くかは、難問である。
メルツ氏は、憲法改正を視野に入れて、協議を進めようとしているが、各勢力との折り合いをつけ、議会での法案成立と政策の実現には、微妙なバランスが求められ、困難が予想される。