
雇用市場は引き続き堅調
注目すべきデータは以下の通り
- 非農業部門雇用者数は前月比14.3万人増(季節調整済み)
- 12月は速報値の25.6万人増から30.7万人増に上方修正
- 失業率は4.0%に低下(前月は4.1%)
- 年次改定の結果、2024年の雇用者数増加は月平均で16.6万人(改定前は18.6万人)。年次ベンチマークの改定で2024年の雇用市場が従来の予想よりも弱かったことが示された。
- 週平均労働時間は34.1時間と、新型コロナウイルスのパンデミック初期と並ぶ低さだった。
- 平均時給は前月比0.5%増、前年同月比では4.1%増加した。
1月のデータからは、雇用市場は堅調であるものの、インフレ圧力が高まることもなく、米国経済が順調に循環していることを示しているといえるだろう。パウエルFRB議長は、雇用市場を「かなり安定している」と評価しているうえ、インフレ圧力の緩和に進展が見られないことやトランプ政権の政策に不透明感が残ることを懸念している。今回の統計は、その姿勢を支持する材料となるだろう。米連邦公開市場委員会(FOMC)は、追加利下げを急がず、トランプ政権の政策がどう展開するかを当面の間、見守る姿勢を維持するだろう。
なお、労働統計局(BLS)は、ロサンゼルス近郊の大規模な山火事や他地域の悪天候は全米の雇用市場に「認識可能な影響」を与えていないと指摘した。なお、悪天候のために働けなかった人は60万人にも達し、パート就労となった人は120万人いるとも公表された。
雇用統計の公表後、米国債券市場では米国債利回りが上昇し、為替市場では米ドルが主要通過に対して上昇した。雇用市場の底堅さと賃金上昇圧力の持続が確認されたことから、FRBが直ちに利下げするとの見方が大きく後退した。短期金融市場では、2025年内に利下げが実施される可能性が1回に限られるとの織り込みに近づいた。
株式市場では、金利低下観測の後退に加えて、トランプ大統領が関税カードを更に切ることを懸念して下落した。週間ベースではマイナスに転じた。また、企業業績の軟化を嫌って、ハイテク株の比重が高いナスダック100指数の前日比1.3%下落した。「マグニフィセントセブン」指数は同1.9%下げた。小型株のラッセル2000指数も同1.2%安。アマゾンは同4%下げた。
材料としては、雇用統計よりも、貿易相手国の対米関税と同等の関税を課して報復する「相互関税」を発表すると述べたトランプ発言が重かった。トランプ大統領は、主要な貿易相手国との貿易戦争をエスカレートさせる姿勢と受け止められ、当面は、市場の懸念材料となるだろう。