奇跡の復活
1月20日、第47代米国大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。第45代大統領でもあるトランプ大統領は復活を遂げ、今回第47代大統領の座に返り咲いた。
大統領就任の宣誓後、トランプ大統領は就任演説を行い、米国の「黄金時代」が始まると明言し、自国の利益を優先させる考えを表明した。「米国政府は信頼の危機に直面」しており、「国内の小さな危機ですら解決できない政府が、国外で続く壊滅的な出来事によろめきながら対応しようとしている」ことに不満を表明した。そして、「米国が他国に利用される状況はもはや容認しない」と述べて、自国のことに専念することを強調した。
演説の中で、トランプ大統領は、選挙中に多くの有権者の関心を集めた主要な政策の詳細に言及した。不法移民については、取り締まりを強化するため、国家非常事態を宣言すると表明した。
エネルギー政策についても、国家エネルギー非常事態を宣言して米国民の支払うコストを引き下げ、インフレ抑制に取り組むことを明言した。また、連邦政府の所有地における新たな石油・ガス開発を許可し、バイデン政権時に気候変動対策として取り組んだグリーン・ニューディールを終わらせるとした。
気候変動対策の国際枠組みである「パリ協定」からは、離脱するとし、米国の戦略石油備蓄の購入を増やし、国外へのエネルギー輸出を拡大させる方針を示した。また、電気自動車(EV)義務化の撤廃により、米国の自動車産業を救い、自動車産業労働者に対する約束を守ると述べた。
関税については、「米国民を豊かにするため諸外国に関税を賦課する」ことを表明した。ただ、即座に関税を課すことはしなかった。今後、対中国、カナダ、メキシコとの貿易関係を検証し、影響も見極めてから実施するのであろう。米通商代表部(USTR)に対して、国ごとに貿易慣行の審査を行い、不公正な慣行が認められれば是正措置を勧告するよう命じた。さらに財務長官に対しては、主要貿易相手国・地域の対ドル為替レートに関する政策や慣行を審査・評価するよう求めた。相対的に強さを維持する米国経済は、物価の伸びは鈍化しつつあるが、インフレ圧力は根強い。このため、インフレを以下に抑制するかは大きな課題である。関税の影響も大きいとされる中で、慎重に検討を経てから判断することにしたのであろう。
また、中国系動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」についても早急に対応を行うことをこれまで通り表明した。
対外関係については、トランプ大統領は強い姿勢で臨む考えを示した。メキシコ湾を「アメリカ湾」に改名すると改めて表明した他、パナマ運河を取り戻す考えも示した。
トランプ氏は就任式後、大統領令に相次ぎ署名した。
世界保健機関(WHO)を巡っては、資金拠出が不公平だとして米国の脱退を命じる大統領令に署名した。米国はWHOの最大の資金拠出国だが、これによりWHOは多額の資金を失うことになる。
エネルギーに関しては、一部の国に対する液化天然ガス(LNG)輸出の新規認可を一時停止する措置の解除を命ずる大統領令に署名した。また、米国沿岸部の約6億2500万エーカー(約253万平方キロメートル)での新たな海洋石油・ガス開発を禁止するとしたバイデン前大統領の決定を取り消した。電気自動車(EV)義務化を撤廃する大統領令にも署名した。
連邦政府においてDEI(多様性、公平性、包摂性)を義務づける政策は、終了させることを命じる大統領令にも署名した。これにより、連邦政府が発行する文書への性別記載は男女どちらかとなり、ジェンダーの使用は認められないことになる。
連邦議会は上下両院とも共和党が多数を占め、連邦最高裁は保守派の判事が多数を占める。トランプ大統領は、より強い求心力を得て、広範囲にわたるアジェンダで、自らが主張する方向への舵取りを明確にし、取り組みを強化するだろう。