1月米国雇用統計

予想以上に堅調なサプライズ

1月米国雇用統計

米国労働省が2月2日に発表した1月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が35.3万人増となり1年ぶりの大幅増を記録した。前月12月の非農業部門雇用者数も速報値21.6万人増から33.3万人増に上方修正されたほか、家計調査に基づく失業率は3.7%で、雇用市場が再び勢いを増していることを示唆する内容だった。

平均時給は、前月比0.6%増と、2022年3月以来の大幅な賃金の伸びを示した。前年同月比では4.5%増、前月も同4.3%増(速報値は同4.1%増)に上方修正された。米FRBにとっては、賃金の上昇圧力が需要拡大を支え、インフレ圧力に繋がりかねないことは心配の種であろう。

この統計を受けて、米FRBが早期に利下げを開始するとの期待は削がれた。市場が織り込む、3月FOMCの利下げ確率は、一段と低下し、2024年通年での利下げ幅予想も縮小した。先週のFOMC直後の記者会見で、パウエル議長は、3月FOMCでの利下げ実施可能性が相当に低いことを示唆していたが、米国経済が高い水準で雇用を創出し、十分に力強さを維持した状況にあるとすれば、FOMCが金利を高い水準に据え置くことは正当化されるだろう。

雇用市場の堅調さは、所得の増加を通じて個人消費を支える。2023年、FRBが積極的な利上げを実施し、米国経済には十分に抑制的な水準まで金利を引き上げたにもかかわらず、当初予想された以上に景気は拡大した。昨秋には、一部で雇用が緩やかに減速し、その減速は賃金の伸びを抑制することから、インフレ圧力が緩和していくことが期待され始めていたが、そのシナリオには狂いが生じたと言える。

米FRBのミッションは、雇用の最大化とインフレ率をコントロール下に置くことである。景気拡大を維持する上で十分に力強い雇用の伸びが続くことが望まれているが、インフレ率が目標である2%へ収斂するとの確証を得るには、より緩やかな賃金上昇に収まることを確認したいだろう。その点から言えば、今回の雇用統計はやはり「ショッキング」な内容だったのではないか。

もちろん、1つの指標ですべてを判断するわけではない。今回の雇用統計も、1月は、米国の多くの地域で厳冬が続き、経済活動が混乱していたことが影響した部分はあるだろう。テキサス州では氷点下を記録、中西部でも大雪、北東部では洪水が発生し、それらが労働力の提供を阻み、賃金の上昇がかさ上げされた可能性はある。悪天候のために就労しなかった労働者数は50万人超と、約3年ぶりに高水準となったことが報告されている。週平均労働時間は34.1時間と、前月の34.3時間から減少した。

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