3会合連続の金融政策据え置き
12月12~13日に開催されたFOMCでは、事前の予想通り、金融政策を据え置き、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標は5.25─5.50%のままとされた。これで、3会合連続して金融政策を維持することを判断したことになる。
ただ、市場は、FOMC声明の細かな言い回しの変化を重要な変更と受け止めた。声明では、インフレ率は依然として高止まりしているとしながらも、2023年を通してみればインフレ圧力は緩和したと評価し、インフレ率を目標の2%に戻すために適切かつ追加的な金融政策を決めるに当たっては、経済と金融の動向を考慮すると表明した。過去2回のFOMC声明では、追加的な金融政策とは引き締めの可能性が高いとの表現だったが、今回の声明では、追加引き締めの必要性が薄れ、上げ下げ両方の選択肢があることを示唆するようなトーンに変わった。
四半期経済見通し(いわゆるドットプロット)でも、19人の政策担当者のうち17人が2024年末には、政策金利が現在よりも低下するとの予想を示した。2024年末のフェデラルファンド金利の見通しの中央値は4.6%となった。また、会見で、パウエル議長は、当局者が利上げを予想しなかったことについて、既に十分な引き締め措置を講じたと考えていると説明した。そして、政策金利は、引き締めサイクルのピークに達したか、ピーク近くにあると考えていると述べたうえで、利下げをどの時期に実施するかが次の最大の関心事になるとまで言及した。2022年3月から実施された急ピッチな金融引き締めサイクルは完了し、2024年には金利が低下し始める可能性が示されたことは、大きな転換となる。インフレとの闘いの勝利宣言は時期尚早だとしながらも、景気抑制的な水準にある金融政策をどうかじ取りしていくか、利下げをいつどのように判断するかが最大の問題となる。
一気に利下げを織り込む金融市場だが
FOMCの決定とパウエル議長のハト派的な会見内容を受けて、金融市場では、2024年の金利低下を織り込みドル金利が一段と低下し、リスク資産は幅広く上昇した。フェデラルファンド先物は、2024年3月にも利下げが開始される可能性を織り込んだ。このところの弱めの経済指標も、より早期の利下げを支持する材料と解釈された。
しかし、冷静に考えれば、インフレ率はまだまだ高い水準にある。雇用市場も、堅調さは維持している。利下げを判断するには、十分にそれを正当化するデータが蓄積し、インフレ率が低下するとの確信がなければならない。それには、まだ数カ月の時間は必要だろう。ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁は、15日、「現時点では、FOMCは利下げについて話し合ってはいない」とし、利下げを織り込みに先走る市場の動きを「時期尚早」だと語っているように、金融市場は先走っている。
ドットプロットで示された金利低下シナリオも、個人消費支出(PCE)価格指数が2024年末までに予想通り低下すればとの条件付きのシナリオであり、2024年早々に利下げを開始できるようになることは難しいのではないか。ボスティック・アトランタ連銀総裁が、15日に語っているように、FRBが利下げを開始できるのは、早くて第3四半期あたりになるのではないか。