米国債券相場は、先週のFOMC(10月31日から11月1日)を挟んで、一転して買い進められ、週末にも雇用統計を受けて急伸した。利回りは急低下した。金融当局の金融政策スタンスは、引き続きインフレを警戒しており、変わらないものの、消費を支えてきた堅調な雇用市場という図式が変わるとの見方が、色濃く働いた。
前週までの経済指標は、堅調な消費と高止まりするインフレ圧力を示唆するものだった。しかし、前週のPCE価格指数に次いで、先週の雇用統計やISM非製造業総合景況指数では、消費の先細りや雇用市場の緩和、景況感の先細りを示唆する統計が出た。今後の指標には、一喜一憂するのではなく、大きなトレンドをとらえていくべきことは変わらないが、今回の雇用統計は、ひとつの転換点となりそうである。
先週のFOMC会合では、FOMCは利上げを見送った。経済統計の潮目の変化を嗅ぎ取ってFOMCは様子見姿勢のまま、我慢しているというのはうがちすぎだろうか?インフレ圧力がこのまま続くのか、ディスインフレの動きが確認されるかどうかを判断するために、これまでの利上げの効果を見極める段階にあることを確認した。やや踏み込んだ発言は、利上げサイクルが終了した可能性に言及した点で、これにより、11月のみならず、12月FOMCでも、政策が据え置かれる可能性が高まった。FOMC声明では、このところ市場金利が上昇し、経済に与える影響が出始めていることも、FRBが拙速な行動を取らない理由として挙げられた。
10年米国債利回りは、前週末の4.85%から4.57%へと急低下した。やはり、10年米国債利回りで5%の水準は絶好の買い場だったといえるだろう。30年米国債利回りは、週足では同5.02%から4.77%へと低下した。こちらも利回り5%は魅力的な水準だったと言えよう。2年債利回りも前週の5.01%から4.84%へ低下した。2・10年債の利回り格差は前週末の▲0.17から▲0.27%に拡大した。フェデラルファンド金利先物のインプライドレートでは、2024年1月までに追加利上げが実施されることの織り込み度合いは約2割を下回った。また2024年6月までには、利下げが実施されることを織り込み始めている。
先週も指摘したが、10月に見られた中長期金利の大幅な上昇を修正するような動きが、現実のものとなった。10年米国債利回りで5%水準は、長期債投資の好機となる水準だった。今後は、徐々に米国経済のスローダウンを確認して、利回りの一段の低下に繋がることになると予想するが、時間軸は、すぐにそれが起こるとも言い難い。年末にかけて、緩やかな低下軌道をたどるのではないか。