金融市場は政策修正を織り込みに行く展開
日本国債相場は下落基調が続いている。10年日本国債利回りは、26日に0.885%をつけ、2013年7月以来、約10年ぶりに高水準に達した。背景には、日本銀行による金融政策の修正が近いとの観測と米国を始めとする主要国での長期金利の上昇がある。
日本銀行は10月30~31日に金融政策決定会合を予定しているが、その会議で、イールドカーブコントロール政策を再修正するとの観測がある。実際の市場の動きに照らしても、YCCの下で、日銀が長期金利の上限としている1.00%水準に近づいていることで、上限を更に引き上げても、影響は小さいとの考えも出てきている。日本でも、物価の上昇を肌で感じることは増えており、インフレ期待は改善する環境にある。日本の実質金利は引き続き低水準で推移しており、仮にYCCを調整しても、現状を追認することにほかならず、混乱はないと見ることにも一定の合理性はあろう。
物価の上昇基調は変わらず
総務省が27日に発表した日本全国の物価の先行指標とされる東京都区部の消費者物価指数では、生鮮食品を除くコアCPIで前年同月比2.7%上昇と、前月の2.5%上昇から伸びが拡大し、4カ月ぶりに伸び率が前の月を上回った。生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは3.8%上昇と前月の3.9%上昇(改定値)から伸びが縮小したが、事前予想は上回った。エネルギーの下落や財価格の上昇一服などを反映してコアCPIの増加幅は縮小傾向にあるが、インフレ圧力の根強さが示唆される。
目立った項目では、政府による電気・ガス価格激変緩和対策事業による補助金が半減したことで電気代やガス代の下落幅は縮小した。また、観光需要の拡大に伴い宿泊料が、42.8%も上昇した。一方、昨年急騰した反動により生鮮食品を除く食料は3カ月連続でプラス幅を縮小した。他には、足元で進行している円安も1ドル=150円を超えてドル高・円安が進行しており、輸入価格の押し上げを通じて物価上昇圧力として懸念される。
1ドル=150円を超えたドル円相場
ドル円為替については、日本政府は、これまで、介入をチラつかせて、実弾を使用せずに円安を食い止めてきたが、これ以上の円安進行には輸入インフレ圧力という負の影響も大きい。また、米国債相場でも10年米国債利回りが5%の大台を超えてきており、グローバルに長期金利に上昇圧力がかかっていることも、円安に影響している。26日には、一時、1ドル=150円70銭を超える局面もあった。
ただ、介入には限界もあり、単独介入では効果にも限りがある。円安に歯止めをかけるためにも、金利上昇を容認する姿勢に転じ、踏み込むとの考え方もありえよう。日銀が31日の金融政策決定会合で物価見通しを上方修正する可能性は十分あると見ている。この状況で、物価見通しをこれまでのまま維持することの方が難しい。長期金利も日銀が上限に設定している1%に近づいており、市場では一段の政策修正の思惑が広がっている。政策変更に関して、思惑が先行しやすい状況にある。政策決定会合まで、日本の長期金利も不安定な動きが続くだろう。