中国全国人民代表大会・常務委員会が、追加経済支援策を取りまとめ

1兆元の新規国債発行を承認

10月20日から24日まで5日間にわたって開催されていた中国全国人民代表大会・常務委員会は、追加経済支援としての政策を取りまとめ、1兆元の新規国債発行を承認、地方政府にも2024年の債券発行枠の一部を前倒して利用できるように法案を可決した。1兆元の新規国債発行により調達する資金は、自然災害で被災した地域の復興支援や都市部のインフラ設備改築にあて、自然災害への耐性を高めるとした。2023年度に地方政府に認められたインフラ事業向けの特別債発行枠は3.8兆元だが、地方政府は9月までに枠を使い切るよう指示されている。今回、2024年の発行枠を前倒し利用できるようにしたことは、そこで財政支出が止まってしまわないようにするためという側面もある。

表向きの大義名分を立てて予算措置を施した格好にしているが、中国では、政府の予算計画が、通常日程以外で見直されることは異例であり、こうしたことから見ても、中国経済の成長軌道には、政府も懸念を持っていることが理解できる。

GDP成長率5.0%前後を達成できるか?

中国政府は、国家目標に掲げたGDP成長率5.0%前後を達成することにコミットし、経済成長を支援するため、財政政策を展開してきた。このため、今年度、終盤には政府の財政状況が逼迫する可能性もあり、それを防ぐために今回の措置が必要だったと言える。これにより、財政政策の支援は継続するものの、経済成長を一段と押し上げることには繋がらないだろう。

新華社通信によれば、2023年の国家財政の赤字は、GDP比で約3.8%となり、従来予測の3.0%から大幅に拡大する見込みとなった。後手に回ったことで、結果的に支出が増えてしまったという側面もあるだろう。

9月経済指標では、消費も生産も改善を示唆するデータが出てきた。しかし、10月の国慶節休暇での消費は、予想を下回った模様である。消費者の先行き見通しは厳しく、財布の紐は固い。中国経済は、引き続きマインドの回復を祈りながら、政府支援で持ちこたえていく構図が続くことになろう。

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