下院は、マッカーシー議長を解任
先々週には、11月17日までのつなぎ予算案を可決した米国議会だが、共和党の内部対立は深刻化し、つなぎ予算を成立させたマッカーシー下院議長が解任された。これは、米国議会史上でも初めてのことである。今回の混乱の要因は、下院内での共和党議員の意見対立である。マッカーシー下院議長は政府機関の閉鎖を回避するために、妥協案を推進してきた。しかし、下院共和党の強硬派は大幅な歳出削減を求め、議長解任も辞さない頑なな構えを見せていた。
下院議長は解任されたが、下院共和党をだれがリードするかは決まっておらず、新下院議長が誰になるか見通しもないまま、下院の議事運営には空白が生じている。また、共和党保守派は、つなぎ予算に強硬に反対しており、新下院議長が、再びつなぎ予算を成立させたり、民主党と妥協したりすることを阻む圧力になろう。歳出法案を巡る交渉は、混迷を極めており、11月17日までの暫定予算が通っているとはいえ、次の期限に遅れる事態も懸念される。再び、政府機関が閉鎖されるリスクは現実味を帯びている。
下院議長選には、共和党強硬派のジム・ジョーダン議員が名乗りを上げているが、マッカーシー解任を主導した8人の保守強硬派議員には、前議長支持派の下院共和党議員の激しい怒りが向けられ、共和党内の対立は先鋭化している。保守強硬派は、政府機関の閉鎖を回避するためのつなぎ予算の利用をやめ、各省庁の予算を手当てする12本の年間歳出法案の成立を求めている。しかし、マッカーシー氏に近いグレイブス下院議員(共和党)は、党内がすぐにまとまることはないとの見方を示している。なお、マッカーシー氏は、下院議長として再選を目指して、議長選に立候補する意向を示しているという。
ウクライナへの追加支援を巡る予算案の議論も、議事運営を難しくしている。上院では民主党を中心に、超党派で法案成立を支持する動きがある。しかし、下院では共和党内で反対の声が強い。下院議長選に名乗りを上げた保守強硬派のジョーダン議員も、ウクライナへの追加支援には反対を明言している。
マッカーシー前議長が解任された後、下院は週内いっぱい休会となった。今週は新議長の選出が開始される。しかし、マッカーシー氏は今年1月に15回の投票を経てようやく議長に選出されたという経緯もある。下院議長を誰にするかは、下院共和党内での激しい攻防は避けられず、選出には前回以上に長期化する懸念もある。そうなると、議会民主・共和両党が、連邦政府予算について交渉に専念でできる時間は多くはないことになる。
連邦政府機関が閉鎖された場合、米国民の生活や米国経済へのマイナスの影響は避けられない。また米国経済の停滞を通じて世界経済にも影響が及ぶ。仮に、長期的な政府機関の閉鎖となった場合には、堅調な雇用市場や、インフレ圧力にもかく乱要因となるだろう。