ECBが政策金利を0.25%幅利上げ
欧州中央銀行(ECB)は9月14日、政策理事会で、中銀預金金利を0.25%幅引き上げ、ECB発足以来最高水準となる4.00%とした。今回の利上げで、10会合連続での利上げを実施したことになる。
欧州経済は、強いインフレ圧力にさらされており、ECBが目標とする2%のインフレ上昇率を大きく上回っている。一方で、欧州経済の足取りは脆弱になってきており、今回の理事会で、0.25%幅の利上げが決断されるとの見方と、米FRB同様に、今回は、インフレを警戒して利上げカードはちらつかせながらも、利上げ判断は次回10月の理事会まで「一回休止」するとの見方が拮抗していた。
ラガルド総裁は、会合後の記者会見で、今回の決定が政策委員会の「確かな過半数」が利上げを支持したことによると述べたが、理事の中には利上げ停止を望む意見があったことを認めた。今回のECB理事会における利上げ判断は、非常に難しいものだったといえる。
ラガルド総裁は、今回の決定は、インフレ率を目標に戻すために十分な貢献をすると考えていると述べ、インフレ圧力に対応した適切なものであることを強調した。政策委員会は金利を「十分に景気抑制的な水準に必要な限り」維持するとしたうえで、インフレが予想以上に長く高止まりした場合には、追加利上げに動く余地を残したということだろう。ただ、金利がピークに達したかどうかについては明言は避け、今後は、金利を高水準で維持する方向にかじを切る可能性に触れて、今後の政策の焦点が、金利を高止まりさせる期間へと移ることを示唆した。また、将来の利下げの可能性について、ラガルド総裁は、理事会でそのような言葉を口にすることさえなかったと述べた。
ECB経済予測は下方修正
今回の大きな注目点は、ECBが示した最新経済予測である。これによれば、欧州の景気は今後数カ月弱い状態が続くとの見通しで、2023-25年の成長率予想は下方修正された。インフレ率は2024年に3.2%、2025年に2.1%、コアインフレ率は2025年に2.2%に落ち着くと予想された。明らかに、リセッションの可能性を見込んでおり、それならば、利上げしなければ良かったのにという反対意見ももっともだろう。これだけ欧州経済の先行き予想が下方修正されるということは、さらなる金融引き締めは正当化されない。金融市場が、これ以上の利上げはないとの見方に転換することも道理である。
利上げの決定を発表すると、ユーロは下落に転じ、一時0.7%安の1.0656ドルと5月以来の安値を付け、週末もその水準で引けた。欧州債券相場では債券価格は上昇し、利回りは低下した。今回のECBの利上げは、欧州経済にとって足かせとなり、経済成長に打撃となることへの懸念が広がった。追加利下げの見込みは大きく低下した。
今回のECB理事会の決定は、一連の利上げの総仕上げに見込まれるようなことを意図したように感じられる。しかし、実際に、これが最後の利上げになるかどうかは、インフレがECBの目論見通りに落ち着いていくかどうかにかかっている。シナリオ通りに、経済成長見通しが悪化していけば、利上げは休止され、政策金利は今回でピークをつけることになるだろう。しかし、再びインフレの圧力が高まれば、追加利上げに踏み込む可能性はある。ECBは表向き、その選択肢を維持したといえるだろう。