8月中国経済統計は小幅改善も、先行き懸念は根強く

中国経済の見通しが厳しくなる中、8月の経済統計が公表され、注目を集めている。

中国税関総署が先週7日に発表した8月の貿易統計では、輸出は前年比8.8%減少、輸入は7.3%減少だった。輸出の減少ペースは7月の同14.5%から縮小し、懸念されたほどの減少とならなかった。輸入も減少ペースが前月の同12.4%から鈍化し、これも懸念されたほど悪くなかった。しかし、内外需ともに弱く、国内の個人消費の低迷が企業収益の悪化に繋がりかねないとの危惧を解消する内容とは言えない。貿易黒字で見ると8月は683.6億ドルと、7月の806億ドルから黒字幅が縮小した。この指標からは、わずかながら改善の兆しはうかがえるが、貿易活動は縮小している可能性が高いと考えられる。

先週9日に発表された8月の物価統計では、消費者物価指数(CPI)が前年比0.1%増となり、2021年2月以来のマイナスだった7月の同0.3%下落からはプラスに転じた。生産者物価指数(PPI)も、前年比3.0%下落と、7月の同4.4%下落からは下落幅を縮小した。政策当局者が需要を促進しデフレ回避を目指す中、一連の指標で景気安定化の兆しが示されている。貿易指標にも、インフレ指標にも改善が見られたことは、政策転換の効果と緩やかな回復プロセスを示唆している。

中国政府は景気刺激策を相次ぎ打ち出しているが、金融市場では、雇用市場の回復が鈍化し、家計所得の先行き見通しも不透明なままであるため、中国政府が打ち出した経済対策が、目論見通り効果を発揮するかどうか疑わしく見始めている。全般的には、需要の弱さが目立つ状況に大きな変わりはなく、このままでは、中国政府による追加の政策支援への期待が再度膨らむことになるだろう。

当局は株安・人民元安を阻止する姿勢に

先週の中国株式市場は、週初、中国政府の住宅購入規制の緩和策や外貨預金準備率の引き下げといった対策を好感して反発して始まった。しかし、日を経るにつれて、政策転換を機に反発した上昇幅の大部分を失った。CSI300指数は、前週末の3,791.49から3,739.99へと軟化して引けた。香港ハンセン指数は前週末の18,382.06(ただし、9月1日金曜日は台風警報(シグナル8)発令のため休場)から18,202.07と小幅に下げた。

9日、中国証券監督管理委員会(証監会)は、資本市場の支援のために、追加措置を講じることを表明した。証監会の易会満主席も出席して、証券業界関係者や投資家らとの会合が開かれ、その場で、テコ入れのための対策についても、ヒアリングを実施したという。証監会のウェブサイトに掲載された声明では、中国資本市場の安定的かつ健全な発展を維持し、より現実的で効果的な政策を導入すると記載された。会議出席者から出された意見や提案も追加措置することを検討するという。異例ともいえるヒアリングを開催してまで市場のテコ入れを図っている理由は、改善しない市場のモメンタムを前に、困惑している当局の姿が透けて見える。中国政府は、不動産開発業者の資金繰り支援には消極的だったが、8月には方針を転換して、資金繰り支援やローン繰り延べを認めるよう金融機関に支援するよう求めた。しかし、建設プロジェクトの中止や物件引き渡しが滞る事態が頻発することで、消費者の住宅購入意欲が後退し、住宅需要が急減するなかで、不動産市況が悪化し、不動産開発業者の資金繰りはますます悪化するという悪循環に陥っている。株式市場も、不動産市場の不振が中国経済の足かせとなり、先行き見通しは悲観的なままである。

人民元は対ドルで、先週、一時、1ドル=7.343元まで売り込まれた。これは、2007年12月以来の安値水準である。中国経済への悲観論がぬぐえず、今週も経済指標の発表を控えており、大幅な反発は望みにくい。そんな中、中国人民銀行は、外為市場自律規制機関が、11日、人民元の過度な変動リスクを断固として阻止し、一方的でプロシクリカルな動きを是正するため必要なら措置を講じる考えであると表明した。当局の意思は明確だが、流れを変えるには至っていない。

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