予想外のコアCPI伸び悩み
7月19日、英政府統計局(ONS)は6月の消費者物価指数CPIを発表した。総合CPIは、前年同月比7.9%上昇にとどまり、5月の同8.7%上昇から伸び悩んだ。市場の事前予想だった同8.2%も下回って、過去1年余りで最も低い伸びだった。
変動の激しい食料品やエネルギーを除くコアCPIの上昇率も前年同月比6.9%と5月の同7.1%から鈍化した。コアインフレの指標のひとつであるエネルギー除く鉱工業製品価格も、今年1月以降で初めて下落した。イングランド銀が、国内のインフレ要因として注視しているサービス価格は、6月に前年同期比7.2%上昇にとどまり、前月の同7.4%から上昇率を下げた。
5月までは、英国のインフレ指標はイングランド銀の予想を上回り続け、同中銀の金融政策スタンスをタカ派の傾向に仕向けていた。このため、市場の英ポンド金利の先行き見通しは、先高観が強かった。今回CPIで、コアインフレ鈍化という5月までの傾向と際立った差ができたことで、金利見通しにも大きな変化が出る可能性がある。イングランド銀行としては、コアCPIの水準はまだ目標対比では、かなり高い水準にあるものの、積極的に金利を上げた影響で、物価上昇圧力が緩和されつつある兆しと受け止める可能性はあろう。ただ、コアCPIの水準が高いことを考慮すれば、まだ手綱を緩めることはできず、8月政策理事会MPCでは、0.50%幅での利上げには踏み込まないものの、0.25%幅での利上げが選択されるのではないだろうか。
今後の注目点は、インフレ圧力が緩和していくことが確認されるかだろう。6月単月の一時的な傾向ではなく、基調的なインフレ圧力の緩和となれば、金利見通しには大きな影響があろう。8月MPC以降、9月と11月にも利上げが継続されるかどうかは、コアCPIがどこまで落ち着いてくるかにかかってくる。
英ポンド金利低下とポンドドル反落
金融市場では、英ポンド政策金利のターミナルレートは6.00%に達しないとの見方を織り込み始めている。短期金利のピーク水準は5.90%まで低下した。最も高くなる時期は2024年2月とこれまでの2024年3月から幾分前倒しとなった。7月初旬には、ターミナルレートは6.50%にまで上昇すると織り込む場面もあったことに比較すると随分と見通しが変化したことがわかる。2年英国債利回りは、統計の発表前は5.00%を超えていたが、一気に4.86%まで20bps余り低下した。
英ポンドの金利低下を受けて、為替相場では、英ポンドが対米ドルで反落した。ポンドドルは一時、7月11日以来の安値となる1ポンド=1.2826ドルまで下げた。ただニューヨーク時間の終値は1ポンド=1.293ドル近辺だった。金利先高だけに支えられたポンドの上昇では、1ポンド=1.30ドル以上の水準は支えられず、ポンドのオーバーバリューと指摘してきた。そのあたりは、相場感を誤ることなく維持したい。