中銀預金金利は3.50%に
欧州中央銀行(ECB)は、6月15日に理事会を開催し、政策金利を0.25%幅引き上げることを決定した。中銀預金金利を3.25%から3.50%に、リファイナンス金利を3.75%から4.00%に引き上げた。今回で8会合続けての利上げ実施となる。昨年7月に利上げを開始して以来、1年間の利上げ幅は計4.0%となる。なお、ECB理事会は、3.2兆ユーロ規模の資産購入プログラム(APP)による再投資を7月1日をもって終了することも決定した。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ECBはインフレ率を目標である2%水準に回帰させるために十分に制約的な水準に引き上げたと述べ、当面この水準に維持されるとの見通しを示した。また、「利上げの過程は終わっていない。まだやるべきことはある。」として、見通しに重大な変化がない限り、7月開催予定の理事会でも、(0.25%幅の)利上げを継続する可能性が極めて高いとのガイダンスを示した。
インフレへの危機感を強めるECB
背景には、インフレは幾分鈍化する兆候を見せ始めているものの、過度に長い期間、高過ぎる水準と評価していることがある。ECBのインフレ見通しは、今回、全般に上昇修正されており、特に来年のコアCPIの予測が引き上げられた点に危機感が透けて見える。ラガルド総裁は、堅調な雇用市場が賃金上昇圧力となっていることや、企業から家計への価格転嫁がインフレ圧力として物価の重要なドライバーになっていると言及した。同見通しでは、インフレ率が2025年まで目標の2%を上回る状況が続くとされており、ECBはインフレに関して危機感を強めていると言えるだろう。
市場の反応
金融市場では、ECBの利上げ発表を受けて、為替相場でユーロが主要通貨に対して上昇した。ユーロドルは、一時1ユーロ=1.095ドルまで上昇し、約5週間ぶりに高値をつけた。ユーロ円でも、1ユーロ=153.50円をつけ、15年ぶりの高値を記録した。欧州債券相場では、利回りは全般に上昇し、金利見通しに敏感な2年ドイツ国債利回りが、前日取引されていた3.05%から3.195%まで上昇した。10年ドイツ国債利回りは、2.45%から2.50%へと上昇した。10年イタリア国債利回りは5bps上昇して4.15%。ECBが市場の予想よりも、金融政策に対してよりタカ派との感触が、中短期債利回りを押し上げた。ただ、欧州経済の成長率見通しは、上方修正されたものの、5月のユーロ圏製造業活動は縮小に転じており、ECBがタカ派姿勢を維持すればするほど、金利の先安感は強まり逆イールドはきつくなる可能性がある。ユーロ高、ユーロ金利上昇には、ついて行きづらい点には注意が必要であろう。