6月FOMCでは利上げ見送りもFOMC参加者の見通しはタカ派維持
米連邦公開市場委員会(FOMC)は6月13~14日に定例会合を開催し、政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートの誘導目標を据え置くと決定した。昨年3月以来続けてきた利上げを今回は見送った。FOMCの声明によれば、今回の決定は、政策金利を据え置くことで、経済状況に関する追加情報を集め、より妥当な金融政策を判断する時間を作るために判断したということである。パウエルFRB議長は、会見でスキップという単語を使って、すぐに訂正したが、「利上げを一回見送る」という判断であることをにじませた。
先の見通しについては、市場は利下げの可能性を取りざたしてきたが、FRBはインフレ沈静化に向けて再び金利を引き上げる可能性が高いと見ていることを示した。今回改定された四半期経済見通し(ドットプロット)によれば、今年年末時点でのFFレートの水準は、FOMC参加者18人のうち12人が5.5~5.75%以上と見ており、インフレ抑制のため追加引き締めが必要となることを予想していることも明らかとなった。前回3月FOMC時点でのFFレートの予測は5.1%だった。0.25%の利上げとすれば、追加利上げの回数は2回で、金融市場の見通しより多い追加利上げを予想していることになる。
パウエル議長はFOMC会合終了後の記者会見で、これまでに実施してきた利上げを踏まえると、利上げが足りないリスクと多過ぎるリスクは均衡の取れた状況に近づきつつあると評価して、今回のFOMCでは、金利を据え置くことが賢明と判断したと述べた。そして、インフレ圧力は引き続き強く、インフレ率をFRBの目標である2%水準に戻すには、まだ長い道のりが残されているとした。パウエル議長によれば、FOMC参加者のほぼ全員がインフレを鈍化させるために、2023年中に数回の追加利上げが適切になると予想しているとも付け加えた。ただ、7月FOMCで追加利上げがあるかについては、その時の状況判断によるとして、「ライブ」なFOMC会合になることを示唆した。また、市場が想定しがちな「利下げ」については、インフレが顕著に鈍化してからのことになるため、「2年ほど先」と考えているとのことである。
市場の反応は限定的だが、利下げシナリオは今後一段と後退も
今回のFOMCでの利上げ見送りは、織り込まれていたため、金融市場での反応は限定的だった。しかし、利下げの可能性を折り込みがちだった金融市場の予想は、覆されつつある。FF先物で見ると今年3月にパウエル議長がタカ派的な発言をして、利下げ期待が大きく後退した動きに近づいており、5月FOMC時点と比較すると、2023年12月時点でのFF先物のインプライドレートは4.00%から5.20%へと1%以上上昇している。2年米国債利回りも、3.80%から4.68%に上昇した。金利低下を前提としてきた利回り曲線には、もう一弾の修正の動きとなるのではないか。なお10年米国債利回りも3.50%から3.80%と上昇したが、こちらは、今後の利回りの上昇幅は大きくないだろう。
為替については、ドル金利が高止まりすることを前提に相場感を組み立てるべきだろう。今後は、金融政策を緩和したまま政策変更に慎重な姿勢を示している日銀のスタンスがどのタイミングで変更されるかに注目が集まろう。政策変更を前提とすると、円高方向へのバイアスがかかりがちだが、それまでに、日本の貿易赤字拡大とキャリートレードから生じる円売り為替ヘッジニーズにより円安が進行してしまうという悪い円安シナリオの可能性は否定できない側面もある。また、日銀が10年日本国債利回りの上限を拡大したとしても0.50%から0.90%程度までの上昇にとどまるとの見方も根強く、その場合は、ドル円のダウンサイドは限られるのではないか。そうなると、向こう3ヶ月程度の予想レンジは、ダウンサイドは132円、アップサイドは145円程度になろう。