中国国家統計局が9日に物価指数(5月)を発表した。消費者物価CPIは前年同月比0.2%上昇し、4月の同0.1%上昇を上回った。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前年同月比0.6%上昇と、前月の同0.7%上昇から鈍化した。食品価格は前年同月比1.0%上昇だった。生産者物価指数PPIは前年同月比で4.6%低下した。前月の同3.6%低下と比較しても更に一段、下落した。商品相場が続落したことに加え、内外需要の低迷が要因と考えられる。
統計局の声明では、消費需要は5月に回復したとしているが、コアCPIの上昇幅は、期待された水準には届いていない。また、PPI低下の原因については、商品相場が概ね下落したほか、工業製品の内外需が弱かったためと説明した。しかし、金融市場では、今回の物価指標は全般に、中国経済が5月に一段と冷え込んだことを示すものと受け止めた。最近公表された経済指標を振り返ると、製造業活動の縮小や輸出の減少、住宅市場の回復鈍化と景気が冷え込みつつあることを示しており、一部には、デフレリスクすら指摘する声も出ている。景気回復ペースが鈍り、インフレ率がゼロに近づく中、中国人民銀行に対しては、利下げ期待が膨らんでいる。
中国人民銀行には緩和の期待高まるが
しかし、中国人民銀行の易綱総裁は、中国経済がなお、新型コロナウイルスのパンデミックからの回復過程にあるとの見方を示し、需要と供給の回復にはタイムラグがあるとの説明を変えていない。また、的を絞った金融政策を継続し、安定的な信用の伸びを確保するとの従来通りのコメントに終始している。先週も、易総裁は上海で実業界や銀行界の関係者に対し講演し、5%前後としている中国政府の経済成長目標を達成できる自信があると明言した。また、インフレ率は今年後半に徐々に回復する見通しだと付け加えた。
先々週には、不動産市場のテコ入れを狙って主要都市の中心部以外で物件の手付金比率を引き下げることや、不動産仲介手数料の減額など、住宅購入時の制約を一段と緩和する対策を打ち出すとの観測が流れた。残念ながら報道はいまのところ真実とは異なっている。このままでは、中国経済の回復が進まず、じり貧に陥るリスクすらある。政策発動への期待は強まるばかりだが、政府の耳には届くのだろうか?
とはいえ、中国政府が劇的な改善につながるような大規模な政策パッケージを出してくるとは望めそうにもない。中国経済の回復には、やはり時間が掛かると見るべきだろう。この報道を受けて、人民元は対米ドルで上昇、1ドル=7.11人民元台から7.08人民元台まで値を戻した。株価も、CSI300指数、香港ハンセン指数とも、反騰に転じた。来週にはプライムレートの見直しタイミングもあり、中国政府の動向には注目しておきたい。