需要が弱い中、電力不足や不動産市場伸び悩みなど試練続く
中国では、電力不足がふたたび問題化も
中国では、今年5月は記録的な猛暑となった。さらに中国南部と沿海部では、今後数週間にわたって高温が続くとの予報も出ている。上海では5月29日に気温が36.1度まで上昇し、南部の省でも35度以上の高温を記録、今週も一部で40度を超える予報である。
そこで、気がかりなのは、電力需給が逼迫する可能性である。上海など大都市では、既に先週から冷房の使用が急増しており、電力需要は夏場のピーク水準に近付いている。多くの企業の製造業拠点となっている広東省では、先週、電力需要が急増し、電力負荷はピーク時点で、2億キロワットを超え、過去最高に迫った。これは、例年より数週間早いという。海南省でも、先週初めて電力負荷が700万キロワットを上回り、広西チワン族自治区でも電力負荷は過去最高水準に2回到達した。
中国では昨年一昨年と、夏場の猛暑を前に当局が電力供給を制限する事態に陥った。一昨年は、火力発電の燃料となる石炭不足、昨年は降水不足による水力発電量の不足と、原因はやや異なるが、電力供給が綱渡りの状態であることは疑いようもない。抜本的な対策は打たれていないという現実もあり、この夏は、消費需要の不足に加えて、電力供給が生産のボトルネックとなる事態も懸念される。
中国政府は重い腰を上げるか
中国国家統計局が5月に公表した4月の不動産投資額は、前年比16.2%減と、3月の同7.2%減から一段と落ち込んだ。不動産販売(床面積ベース)でも、4月は前年比11.8%減少となり、3月の同3.5%減から落ち込んだ。資金繰りへの制限が緩和したとはいえ、経済環境としては、信用状況は悪化しており、相対的に高い債務水準にある不動産開発業者は、資金繰りが楽ではないと推測される。そのため、住宅プロジェクトの開発遅延や建設の見合わせは発生している。販売価格も下落傾向には歯止めがかかっていない。4月新築住宅価格は前年比0.2%減少と、12カ月連続でマイナスとなった。
不動産開発業者は、業績悪化と資金繰り難、価格下落により経営難が続いている。バランスシートの調整がある程度進み、需要が回復しないと、市況の回復は難しい現状がある。中国人民銀行は、金融緩和を小刻みに断続的に続けているが、効果は劇的には現れず、不動産市場が上向くには、時間を要すると考えられる。
一部では、中国政府が、不動産市況対策として、主要都市中心部以外での物件の手付金比率を引き下げるなどの対策を検討しているとの報道もあった。昨年、中国政府は、不動産開発業者への厳しい姿勢を転換し、資金供給の制限を緩和するなど16項目の政策パッケージを打ち出した。これにより、中国の不動産セクターは住宅を中心に需要が回復、不動産市況の底割れは免れたものの、不動産市況の持続的な持ち直しにはつながっていない。
しかし、ここへきて総需要の伸びがみられないことに痺れを切らした当局は、主要都市の中心部以外で物件の手付金比率を引き下げることや、不動産仲介手数料の減額など、住宅購入時の制約を一段と緩和する対策を打ち出し、不動産需要を刺激することを検討しているといわれている。報道が真実であるかどうか、注目されるところだが、期待通りであっても、劇的な改善にはやはり時間が掛かると見るべきだろう。この報道を受けて、人民元は対米ドルで上昇、1ドル=7.11人民元台から7.08人民元台まで値を戻した。株価も、CSI300指数、香港ハンセン指数とも、反騰に転じた。今週の中国政府の動向には注目しておきたい。