4月に入り経済活動はむしろ鈍化
財新とS&Pグローバル社が、5月5日に発表した中国のサービス業購買担当者指数PMI(4月)は56.4だった。前月は57.8だった。経済活動の拡大・縮小の境目となる50は上回ってており、4カ月連続で拡大しており、サービス業の活動は回復基調を維持しており、新規受注も強い。ただ、拡大ペースは前月から鈍化しており、回復の力強さは期待されたほど強くないことも示唆される。ちなみに、国家統計局が4月30日に発表した非製造業PMI(4月)も56.4と前月の58.2から低下しており、両者は符合している。
製造業購買担当者指数PMI(4月)は、国家統計局調査によると49.2で3月の51.96から低下して、活動拡大・縮小の境目である50を下回った。財新とS&Pグローバルの調査によると同PMIは49.5で前月の50から低下した。中国製造業の活動は4月に入って縮小に転じており、景気回復の勢いは息切れリスクに直面しているといえるだろう。
中国では、家計消費も伸びが見られない。一方で、家計の貯蓄は急増している。家計貯蓄残高は2022年に17.8兆元増と過去最大の伸びを記録した。今年第1四半期には、更に9.9兆元が上積みされた。この金額は、2021年の伸びに肩を並べる巨額なものである。コロナ禍で厳しいロックダウンを経験した中国の家計は、いつ来るか不透明な政策リスクへの備えから、消費には慎重となり、消費よりも貯蓄に、貨幣よりも実物資産にシフトする「Fly to Safety」の動きを強めている。
鈍い政策への動き
中国人民銀行は、3月以来、市中銀行に対して、預金金利の引き下げを促す指示を出した。中国国内の貯蓄が膨れ上がっていることに着目して、貯蓄のインセンティブである金利を下げ、それを支出や投資に振り向けることが目的だという。このところ、預金金利引き下げが相次いでおり、利ざや拡大期待が広がって、中国の銀行株は上昇している。
しかし、市場が期待していたほど、中国政府が景気刺激策に積極的でないことも認識されるようになってきた。4月28日の中国共産党中央政治局会議では、景気回復ペースが予想を上回っているとの、穏当なトーンにとどまっていたことを見ても、その印象が強まっている。世界金融危機の際には、約4兆元規模で景気刺激策を展開した中国政府は、何が何でも経済成長率を押し上げようとの熱意には欠けているようにみえる。