堅調な雇用市場の状況は変わらず
米国労働省が4月7日に発表した雇用統計(3月)では、非農業部門雇用者数が23.6万人増加、失業率も3.5%と雇用市場が引き続きタイトで堅調であることが示された。雇用者数の前月確定値は32.6万人と速報値31.1万人から上昇修正された。この発表を受けて、米ドル金利は上昇、為替もドル高に動き、ドル円が132円台にのせた。
労働需要は強く、雇用市場は引き締まり続く
4月7日、米国労働省は3月雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は前月比23.6万人増と事前の予想であった20万人程度を上回った。前月2月の同雇用者数も32.6万人増と速報値31.1万人増から上方修正された。
失業率は3.5%と2月の3.6%から改善、再び史上最低の水準に低下した。また、労働参加率は62.6%と、3年ぶりの高い水準に上昇した。平均時給は前年同月比4.2%増にとどまり、2021年6月以来の水準に伸び悩んだ。
労働力の不足は根深いといえる。小規模事業者やサービス業を中心とする多くの企業が人材の獲得・維持に苦戦している。業種別では、娯楽・ホスピタリティーや医療などのセクターで、雇用者数が大幅に伸びた。一方で、小売りと人材派遣業では雇用者は減少した。業種によるばらつきは出てきており、労働需給バランス全体としては、改善傾向もみられる。それは、賃金増加圧力の緩和につながる可能性がある。
実際に、今年に入ってから、米国経済指標の一部には、インフレ率の上昇圧力の後退や需給の緊張緩和を示しているものも出てきている。雇用統計の中でも、平均時給は前年同月比で2021年6月以来の低い伸びとなるなど、市場軟化の兆しも見られる。しかし、3月までの累計で、非農業部門雇用者の増加数は既に100万人を超えている。雇用市場は労働に対する需要が底堅いことが分かる。力強い雇用統計のデータが続いていることから、米国の雇用市場は堅調なペースで拡大していると理解すべきだろう。インフレ圧力はなお高い水準にとどまっており、米FRBが、次回5月2日・3日のFOMC会合で利上げする材料になるだろう。なお、5月のFOMC会合前に公表される雇用統計は、今回の3月統計が最後である。
米FRBの利上げは継続
3月は、米地銀3行の経営破綻により、金融システムにストレスが掛かり、信用収縮状況が起こった。金融当局の素早い対応で、負の連鎖を防いだ。しかし、それはまだ完全には収束していない。それでもなお、FRBはインフレ抑制のために行動を採ることを優先して、金融システムへの不安は、政策金利の判断には、影響しないとの姿勢を変えていない。5月FOMCで0.25%幅の利上げ実施の可能性は高いだろう。
問題は、2つある。一つは、今回の引き締めサイクルで、次回FOMCでの利上げが最後となるかどうかである。これは依然として高い水準にあるコアCPIやPCE指数の動向次第だが、ドットプロットに示された5.50%水準までは、0.25%幅で2回分の利上げカードが残されている。5月で打ち止めとなる可能性は、まだ低いのではないか。
もう一つは、金利がどの時点でピークを付けるかである。市場は、年後半からの利下げを織り込んでいるため、2年米国債の利回りは3月に急低下した。しかし、雇用市場の引き締まりやインフレ圧力の強さを考慮すれば、FRBは金利を上げないまでも、長期間高い水準に据え置く可能性は残る。今年年央に、ピークを付けると決めつけることはリスクが大きい。実際に、FOMCのドットプロットによる今年末時点での失業率の予想の中央値は4.5%だが、3月の失業率は3.5%と大きく開きがあることも考慮すれば、年内はFF金利が5.00%を下回ることは難しいのではないだろうか。