中国全国人民代表大会始まる
5日、中国で全国人民代表大会(全人代)が開幕し13日まで行われる。冒頭に、李克強首相が政府経済報告を慣例行い、その中で、2023年の国内総生産(GDP)成長率目標を5.00%前後に設定すると発表した。財政赤字については、対GDP比3%とすることも明言した。2022年は、経済成長率目標を5.5%前後と設定したにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染拡大の影響や不動産開発業者の流動性危機が足かせとなり、実際の成長率は3.0%成長にとどまった。年間成長率3.0%は、1976年以来の最低水準であり、政府目標を大幅に下回ったことには危機意識も強い。中国経済を成長軌道に戻し、信頼回復と金融システミックリスクを回避するためにも、成長軌道への回帰に向けた取り組みは重要と考えられている。
2023年は、内需拡大を重視し、積極的な財政政策を行うことを明言した。2023年は、雇用については、都市部で約1,200万人の雇用創出を目指す。消費者物価指数(CPI)の上昇率目標は約3%に設定した。地方政府が発行する特別債の枠は3.8兆億元(約75兆円)をめどに認めるという。なお、国防費は7.2%増え1.55兆元で、2019年以来の大きな伸び率となる。
不動産市場が安定的で持続的に発展するよう、無秩序な拡大を防止する取り組みが必要だと、李首相は指摘した。既に、昨年第4四半期から、中国政府は、不動産開発業者に流動性をつけ、経営状況が大きく改善している企業は多い。しかし、今後も、優良な不動産開発会社にバランスシートの強化・改善を促す支援策を展開し、より安定した経営基盤を獲得させると表明した。
2022年終わりに、新型コロナウイルスの感染抑制政策を転換したことから、景況感は底打ちしてはいる。しかし、現状の消費需要では、中国景気の年5%成長を成り行きで達成できるかどうかは、決して楽観できる状態ではない。中国政府が、内需拡大を目指して、景気刺激策を打ち出すことへの期待感は大きかったため、具体策が乏しいままでは、5.0%前後のGDP成長率目標も、控えめな目標設定と映り、期待感が剥落する展開もありうるのではないか。
なお、全人代の王超報道官によれば、国家主席と国家副主席は10日に選出される予定。李国強首相が退任するため、新首相に注目が集まっているが、人事は11日に発表される。後任には、李強中央政治局常務委員が首相に就任すると見られている。新首相は、全人代閉幕後に記者会見を開く可能性が高いという。また、12日には副首相と国務委員、国務院の閣僚、中国人民銀行の新総裁が指名される。