米FOMC – 0.50%幅の利上げ実施、来年の金利予測は前回から上方修正
米連邦公開市場委員会(FOMC)は14日、2日間にわたって開催された会合で、政策金利を0.5%幅引上げることを決めたことを発表した。この利上げでフェデラルファンド金利の誘導目標レンジは4.25-4.5%に引き上げられた。前回11月までの4会合続けて0.75%利上げしてきたが、今回は0.50%幅にとどめたことになる。
パウエルFRB議長は、今回のFOMCでは、政策スタンスは、まだ十分に景気抑制的なものではないと判断していることを明らかにした上で、今年進めてきた金融引締め局面は、終了に近づいてはいないとの見解を示し、継続的な政策金利の誘導目標レンジを引き上げることが適切になると見込んでいることを明言した。注目されていた四半期経済予測(ドットプロット)でも、FOMC参加者による2023年~2024年の政策金利予想は引き上げられた。政策金利予測の中央値は、2023年末に5.1%、2024年末に4.1%と示された。
タカ派姿勢のパウエル議長
パウエル議長は、来年1月31日~2月1日に予定されている次回FOMCでも利上げを実施することを示唆した上で、引上げ幅は今後入手するデータ次第だと語った。ただ、インフレ率が持続的な形で2%へ向けて低下しているとFOMCが確信し、物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスを当面は維持する必要がありそうだとして、早期の利下げを検討する段階にはないことを示唆した。すなわち、FOMCが2023年中に金融政策を反転させ、利下げを始めるとの金融市場の期待を退けた。
一方で、FOMC参加者の予測では、米国経済の成長率は2022年については年率0.5%にわずかながら上方修正されたものの、2023年は同0.5%増に引き下げられた。失業率については2023年に4.6%まで上昇すると見込まれている。米国経済が利上げの影響を受けてスローダウンするとの見通しが示された。
市場は消化不良
金融市場の反応は、やや複雑なものになった。利上げ幅が0.50%幅だったことを受けて、利上げの早期停止への期待が膨らみ米国株式相場は一旦上昇したが、追加利上げを示唆したパウエル議長のタカ派的な発言により、引けにかけては売り込まれ荒い値動きの中、前日比では下げて取引を終えた。
S&P500指数は 前日比0.6%安の3,995.32、ダウ平均は同0.4%下げて33,966.35、ナスダック総合指数は同0.8%低い11,170.89で取引を終えた。
米国債相場も荒い値動きの一日だった。利上げ継続の示唆にパウエル発言後は利回りが上昇したが、その後はリセッション懸念が意識されて、前日比では利回りは低下して取引を終えた。2年米国債利回りは一時4.30%を超えたものの、引けは4.21%まで低下した。10年米国債利回りは3.48%、30年米国債利回りは3.54%といずれも小幅に利回りが低下して取引を終えた。
為替相場では、米ドルが主要通貨に対して下げた。FOMC会合の結果発表後はいったん米ドルが上昇する場面もあったが、市場は、FOMCの金利引上げ継続姿勢よりも、リセッションによる利上げ停止シナリオを意識した恰好である。ドル円は一時、136円ちょうど近辺を試したが、ニューヨーク時間の取引終了にかけて値を下げ135円台でもみ合ったまま取引を終えた。
インフレ抑制には時間を要する
総じて、金融市場は今回のFOMCを材料として消化できていない感がある。FOMCのタカ派的な見方に収れんするのか、市場が期待するようなインフレの落ち着きが見られるようになるのか、大きなギャップがあり、当面は、データに一喜一憂する展開が続くのだろう。筆者は、インフレの水準はまだかなりの高水準にあることを前提に、警戒感を解くべきではないと考えている。