中国では新型コロナウイルスの感染拡大が続く

中国で新型コロナウイルス感染が拡大

中国本土では、新型コロナウイルス感染の拡大に歯止めがかからない。中国国家衛生健康委員会の発表によると、新規陽性者(無症状者含む)は、11月23日に初めて3万人を超え、27日には4万人を上回って史上最多数を記録した。広東省での感染者が特に多く、首都北京市でも最多数を記録した。主要都市では感染対策として行動規制が強化されており、外出抑制などが求められているが、今年4月に上海で行ったような厳格なロックダウンは実施されていない。

中国当局は先々週末、感染症対策を「最適化」する20項目の措置を発表。感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策から、より的を絞った「ダイナミック・ゼロコロナ」政策にシフトした。行動制限の有無と感染者の増減に因果関係があるとは言い難いが、感染制御と日常生活維持とのバランスを取る政策への移行のタイミングは微妙だった。当局はPCR検査を義務付けるなど感染対策の強化を実施しているが事実上、効果は見えてこない。感染拡大が続けば中国経済への悪影響がさらに懸念される。

フォックスコンの工場では抗議活動

アップルの「iPhone」を受託生産しているフォックスコン・テクノロジー社の河南省鄭州市にある生産拠点で従業員たちが、警備員と衝突したことが伝えられた。同工場は、世界最大の「iPhone」生産拠点で、新型コロナウイルスの感染防止策として、外部との接触を制限した「バブル」方式で、過去数週間、生産を続けてきた。

「バブル」方式により、工場の敷地内は外部から遮断され、内部で生産作業に携わる従業員は工場内の「寮」のような施設で、一定期間、生活することを強いられた。もちろん、そうした条件のもとに、給与を支払い、従業員を募集したのだが、生活する「寮」の実態は、不衛生で生活に耐えられない状況になっていたという。同工場では、約20万人もの従業員がいたが、会社の手配も拙かったようで、食糧はわずかばかりの粗末なものが与えられ、生活する施設内にはごみがたまった状態で、既に何週間か経過していた。施設から離脱する従業員も多く、厳しい制限措置の下で、労使間の緊張が高まっていたらしい。

会社側は、従業員に状況の改善を約束し、融和策として、割増賃金などを提示したが、来年3月半ばまで勤務を続けていることが支払い条件との内容が含まれていたことで、数百人の従業員が怒りの抗議活動を開始、工場内で警備部門と衝突した。従業員の中には負傷する者も出て、沈静化のために23日には地元警察も出動、事態はさらに混乱した模様である。

河南省鄭州市では、23日の速報ベースで陽性者が996人と、22日に確認された813人を上回った。そのため、鄭州市当局は、23日夜、新型コロナウイルス感染の増加を理由に、都市部の8地区で11月25-29日に移動制限を実施すると発表した。住民には自宅にとどまるよう要請し、それ以外の住民にも必要のない限り都市部を離れないように求めた。同期間に、大規模なPCR検査も毎日実施されるという。事実上のロックダウン実施であるが、フォックスコンの工場での混乱を抑え込むためとの見方もある。

中国は、「ゼロコロナ」政策から「ダイナミック・ゼロコロナ」政策への移行を巡って、難しい局面を迎えている。新指導部は、中国経済の底割れを回避するため、経済成長にも配慮する方向性を打ち出したが、フォックスコン社のように、グローバルなサプライチェーンでは、混乱が続いている。

中国各地でデモの報道

感染が拡大する中国では、先週末から、主要都市で新たな行動制限に抗議するデモ活動が、確認され勢いを増している。ウルムチでの火災と隔離措置が紐づけられて、住民の怒りと不満は街頭での抗議活動に発展し、習近平国家主席の退陣を訴える声も上がっているようである。一部では、隔離命令に従わない住民と治安当局が衝突したとの報道もある。大学のキャンパスでは学生らがデモを行った。習主席の母校、清華大学でも27日に抗議活動が行われたことが確認された。

デモは政治的な主義主張というより、新型コロナウイルス感染と行動規制の効果がはっきりしない中で、果たして意味があるのかどうかということへのフラストレーションが原因だろう。中国では、10人以上の人が集まるデモは、原則として禁じられており、これだけ各地で発生するということはそれほどたまったうっぷんがあるという事、推して知るべしである。少なくとも経済への影響を排除して、如何にダメージコントロールできるかが課題になってきている。

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