ニューヨーク連銀家計調査10月
14日にニューヨーク連銀が発表した家計調査10月では、消費者のインフレに対する楽観度が低下した。1年後のインフレ期待は5.9%と、9月調査時点の同5.4%から0.5%上昇した。3年後は3.1%(9月は2.9%)、5年後は2.4%(同2.2%)とそれぞれ上昇した。米FRBが目標としているインフレ率は2%であり、この水準をいずれも大きく上回っている。
要因としては、ガソリン価格が上昇する見通しが再度強まっているためで、実際にガソリン価格は10月に全米で上昇した。また、食品や住居費でも1年後の価格の見通しは上昇しており、家賃の上昇率は1年後で9.8%に達すると消費者は予想しているという結果となった。一方で、所得の伸びにも、楽観的な見方が強まった。車社会である米国で、ガソリン価格の上昇は、消費者にダイレクトに響く。家計が一番痛みを感じやすいのはガソリン価格であり、感応度が高いことが改めて示された。
10月CPIでは、インフレ率の上方幅がわずかに縮小したが、絶対水準は以前高い。インフレの沈静化と評価することは早計であると引き続き考えている。
ウォラーFRB理事発言
そんな中、14日は、ウォラーFRB理事が、10月の米CPIについて、指数の上昇率が前年同月比7.7%に鈍化したことは良いニュースだが、一つのデータに過ぎず、FRBが利上げを停止するまでには「まだ道のりは長い」との認識を示した。同氏は、FOMCで4会合連続で0.75%幅で利上げを実施した後で、次回12月のFOMC会合またはその後の会合では、利上げ幅を0.5%幅に縮小することはあり得るとしながらも、利上げの停止に近づいているわけではないとして、注意を促した。
また、インフレ率がFRBの目標近くに低下するまで、金利はしばらくの間、高止まりするとし、まだ道のりは長く、次回会合か次の2会合で終わりになるとは考えていないと、同理事は語った。
これは、FOMC後にパウエル議長が記者会見で発言した内容と符合する。インフレが抑制でき、金利の上昇局面が見通せるには、まだ長い道のりが待っていそうである。
先日の記事「パウエル発言の意味」(11月14日掲載)もご参照ください。