ダイナミック・ゼロコロナへの転換

ダイナミック・ゼロコロナとは?

11月2日、中国国家衛生健康委員会で開催された、第20回中国共産党代表大会に関する集団学習会では、「ダイナミック・ゼロコロナ」を堅持し、最小の範囲、最短の時間、最低のコストで新型コロナ感染拡大を抑え込むよう求めた。これは、中央当局の意向を地方や下部組織に伝達浸透させるもので、よく読むと、感染抑制のために実施する措置が度を超えて、経済活動の妨げにならないようにするべきとの方針転換が見える。

実際に、中国保健当局は11月11日、新型コロナウイルス感染対策を隔離期間の短縮を含み一部緩和した。濃厚接触者と入国者の隔離期間を、集中隔離期間が7日間から5日間に2日間短縮した。集中隔離期間後の自宅隔離期間3日間は変わらないとした。また、感染者を搭乗させた航空会社への罰則(サーキットブレーカー)を廃止した。その他には、「二次接触者」の特定も中止し、感染リスク地区の分類も従来の「高」「中」「低」から「高」と「低」に簡素化して、行動規制を適用する範囲を小さくし、影響範囲の人数を最小限に抑えるという。また、同委員会はワクチン接種の拡大を加速する計画も発表した。

ゼロコロナとは異なる「ダイナミック・ゼロコロナ」

日本のメディアは、10日に開催された中央政治局常務委員会での「ダイナミック・ゼロコロナ」政策を堅持するとした決定の内容を、ゼロコロナ政策の堅持として報じたが、全くの誤報であった。常務委員会では、中国の最高指導部は、より的を絞った新型コロナウイルス対策を講じるよう求め、地方当局が防疫措置を講じる場合には、工場の生産停止、交通機関の運行停止などを含めた制限措置を認めないことが表明されており、これは、前述2日の中国国家衛生健康委員会での内容に符合する。今後は、厳格な行動制限を強いるゼロコロナ政策とは一線を画すものダイナミック・ゼロコロナ政策」が運用されていくということのようだ。

なお、中国政府当局や中国の防疫対応に携わる専門家の説明によると、「ダイナミック・ゼロコロナ」とは国内の「感染者の発生をゼロにする」ものではなく、感染者の能動的かつ迅速な発見を行い、感染者に対して速やかに疫学的調査、診断、隔離、治療を行い、コミュニティー内で持続的に感染が広がることを防ぐ防疫戦略であるという。

足元の中国経済の状況は厳しい

中国経済の成長率見通しは、2022年、政府目標の5.5%前後に対して、3.0%台前半に低下している。2023年前半には、さすがに国境を再開すると見込まれているが、2023年~2024年いずれの経済成長も5.0%を下回る予想が増え、厳しい見方が増えている。中国新指導部は、経済成長という重い課題に、取り組むことになる。

ただ、足元では中国の新規感染者は急拡大しており、昨日時点の新規陽性者(無症状者含む)は今年4月以来となる計10,000人を突破したことは気がかりな材料であることに変わりはない。

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