香港・中国市場Dairy ~ トラス英政権が大幅減税案を撤回。市場は混乱より呆れ顔。香港株式は買いの手掛かりなく軟調。
ハンセン指数 17,079.51 pt (▲0.83%)
中国本土株指数 5,856.82 pt (▲0.97%)
レッドチップ指数 3,365.78 pt (+0.81%)
売買代金633億3百万HK$(前日849億1万HK$)
英国のトラス新政権が9月23日に打ち出した大型減税に端を発し、英國は金融機器にも似た状況に陥っていたが、トラス政権は3日、所得税の最高税率引き下げ案を撤回すると発表した。現行の最高所得税率45%を来年4月から40%に引き下げるとしていたパッケージの目玉は与党からも批判が強く、評価は散々だった。このことから、議会はおろか与党内もまとめきれないとして、断念したものと思われる。
この発表を受けて、国債増発への懸念から大幅に売られていた英国10年債は買い戻され、同利回りは低下、約14年ぶりの高水準から、一時4%を割り込んだ。為替相場でも、ポンドは対ドルで、一時約1%高と反応したが長くは値を維持できず、上げ幅を縮小した。
先週末、ポンドドルは1ポンド=1.04ドルを割り込み、過去最安値を記録した。英中銀であるイングランド銀行は、今年に入ってインフレ対策で進めてきた金融引き締め路線とは相反する緩和策を市場安定化のために行うことを余儀されるなど、英國資産への信頼感が損なわれた。また、英國の危機はグローバルにも波及しうる不安定な状況に追い込まれ、世界同時株安とドル高の動きをあと押しした。
ただ、市場が織り込む英中銀の利上げ幅は年内に1.25%幅、来年6月までには政策金利が5.75%に達するとしている。インフレ抑制のためには、致し方ない一方で、金利を積極的に引き上げれば、リセッション懸念が強まり、英国の財政破綻懸念に繋がりかねないというにっちもさっちもいかない事態を招いている。今回のトラス政権のドタバタぶりも、単に政権と与党の間での根回し不足だけを理由にしては済まされない失態である。
3日の香港市場は朝方から先週末の米株安を受けて続落し、取引時間中に一時17,000pt割れと2011年10月6日以来の水準まで下げた。午後からは下げ幅を縮小し、前述のトラス政権の減税案の撤回に反応して買い戻しも見られたが、結局は前日比0.83%安で引けた。連日、年初来安値を更新しており、下値模索の展開である。出来高ベースで633億香港ドルと今年最低の水準となったことも、後味の悪さを残す。
景気見通し懸念と欧州での大手金融機関の経営危機の噂から金融株が売られ、中国のゆうちょ銀行ともいえる中国郵便政儲蓄銀行(1658)は11.1%安、香港銀行の東亜銀行は3.2%安、英系大手のHSBC(0005)は2.1%安で引けた。生保では大手の新華人寿保険(1336)は5.8%安、中国平安保険(2318)は4.3%安、証券では海通証券(6837)は7.4%安、広発証券(1776)は5.2%安と下げ幅が大きかった。
半面、中国本土不動産株は堅調だった。不動産株で構成されるハンセン本土不動産指数は前日比5.35%高と市場をアウトパフォームした。先週末、中国人民銀行が一部都市で初回の住宅購入者向けローン金利の下限を段階的に引き下げることを地方政府に認める発表をしたほか、金融規制当局が主要国有銀行6行に対し、不動産セクター向けに総額で少なくとも6,000億元相当の財務支援を提供するよう指示したとの報道が好感された。中国不動産開発大手の碧桂園(2007)8.7%高、碧桂園服務(6098)は8.1%高、不動産開発の龍湖集團(0960)は7.9%高、中国海外発展(0688)は4.8%高、華潤置地(1109)は4.2%高となった。
中国政府は、先週、住宅購入抑制策の緩和を促すとともに、銀行には不動産開発業者への資金調達の支援を打ち出してきた。不良債権化した不動産プロジェクトを絡み合った糸を解くように完了させていくのは悪い話ではないが、時間はかかるだろう。不動産市況の回復には、時間がかかると見るべきだろう。厳しい環境が続く。
中国本土の金融市場は今週、国慶節の祝日に伴い10月3〜7日にかけて休場となる。相場のモメンタムが悪化していたときだけに、休場となるのは良かったかもしれない。今月16日から開幕する予定の第20回共産党大会を控え、追加経済パッケージへの期待は高まっている。
なお香港市場は重陽節の祝日のため、明日4日(火)は休場に伴い、本レポートもお休みとなります。