香港・中国市場Dairy ~ 景気後退懸念から世界同時株安。中国・香港株も大幅安
ハンセン指数 17,250.88 pt (▲3.41%)
中国本土株指数 5,958.62 pt (▲3.12%)
レッドチップ指数 3,377.73 pt (▲3.41%)
売買代金1,087億5百万HK$(前日975億3万HK$)
欧米経済の先行きに対する不安感は増大し、株式市場はグローバルに売りが続く展開となった。米株市場ではS&P500が6営業日続落し、2020年2月以来最長の下げを記録した。年初の高値からは約24%下落したことで、ベア(下落)マーケット入りとみなされる。世界的に株式相場は下値不安が高まっている。
米連邦準備制度理事会の急速な利上げに伴う景気減速懸念や、欧州ではエネルギー危機の可能性が取りざたされている。中国経済の足取りもおぼつかない。株式市場にとってはグローバルに悪材料が目白押しである。27日、ロシアは天然ガスを欧州向けに供給している最後のパイプラインを遮断すると警告した。来年には、天然ガス価格が落ち着きを取り戻すとの観測が台頭していただけに、その目算が外れる可能性があり、長期化するインフレが悪化するとの警戒が高まった。10年米国債利回りは、アジア時間の取引でさらに上昇し、2010年以降で初めて4.00%を超えた(債券価格は下落)。
安全への逃避行動が強まり、為替相場では、主要通貨に対する米ドルが買い進まれた。ドルインデックスは高値を更新し、114.60をつけた。ドル円でもドル買い圧力となり、一時114円88銭までドルが買われ、為替介入前の水準まで切り上がった。中国人民元は、対ドルで下落し、1ドル=7.2元台を突破、2008年以来の安値を付けた。中国人民銀行は、この日の中心レートを1ドル=7.1107元に設定、市場予想から25営業日連続で予想よりも元高水準に設定した。しかし、それが元安の歯止めにはなっていない。
28日のアジア市場は全面安となり、主要指数は直近の安値を更新した。日経平均は前日比1.5%安と約3ヶ月ぶりの安値を割り込んだ。韓国総合株価指数(KOSPI)の下げも目立ち、前日比2.45%安、2020年7月以来の安値水準をつけた。
香港株の下げ幅もきつく、ハンセン指数は他市場の指数をアンダーパフォームして、前日比3.41%安と安値を更新、終値ベースでは2011年10月6日以来の安値となった。同指数は、2018年に付けた高値から50%強下げており、構成銘柄は一時、全面安の様相となる場面もみられた。
ハイテク株で構成されるハンセンテック指数も同様に終日、下げ幅を広げ前日比3.85%安と3月に付けた過去最安値まであと少しとなった。構成銘柄は全面安となり、中国経済の先行きも不安と長期金利の上昇が値嵩株の売りに繋がった。市場は全面安の様相となり、幅広い銘柄が売られた。中国不動産開発大手の碧桂園(2007)は12.9%安、不動産管理サービスの碧桂園服務(6098)は11.8%安、アルミメーカーの中国宏橋(1378)は8.2%安、ガラス生産の信義光能(0968)は6.7%安と大きく売られた。
主要銘柄も大幅安となり、英系大手銀のHSBC(0005)は5.7%安、Eコマースの京東集団(9618)は5.6安、保険大手の中国平安保険(2318)、アリババ(9988)はそろって4.1%安となった。
中国本土株市場は上海総合指数は前日比1.58%安の3,045.07、CSI300は1.63安の3,828.71で引けた。両指数は終日、下値を模索して値を切り下げる展開で、約4カ月半ぶりの安値水準に落ち込んだ。急速な人民元安や中国からの資金流出が警戒された形となった。
米FRBのインフレ抑制の決意を示す姿勢は、確かにタカ派的であるが、それがリセッション突入の引き金を引くことになれば、長期債利回りには低下圧力となるわけで、冷静に考えれば、長期金利まで上がり続けることには矛盾もはらむ。しかし、短期金利がどこまで上昇するかわからないという不安感とそれにより利回り曲線もどこまで水準を切り上げて上昇するのか分からなくなっており、不安に苛まれた相場は大きく揺れている。筆者は、ターミナルレート(今回の利上げサイクルの最高到達点)は大事なポイントになると申し上げてきたが、それが現実になっている。インフレが落ち着くことで、ターミナルレートがドットプロットで示されたほど、高くならない可能性も、まだ十分あるのだが。FOMC声明でも、今後のデータ次第との言及を忘れてはいない。
今週は、ロシアがウクライナ占領地域での住民投票結果を受けて、同地域のロシアへの編入を決める模様である。経済的なリスクに加えて、地政学的なリスクも増幅する可能性に、金融市場の動揺は続く。