9月FOMCでも0.75%幅での利上げ実施
9月20~21日に開催されたFOMCでは、政策金利を0.75%幅で引き上げることが決定された。これで6月・7月のFOMCに続けて3会合連続して0.75%幅での利上げとなる。フェデラルファンド金利の誘導目標のレンジは3.00~3.25%に引き上げられ3.00%を超える。
会合後に発表されたFOMC声明では、米国経済について、最近の経済指標から以下の通り認識していることを示した。
- 支出と生産の緩慢な伸び。
- 雇用はこの数カ月も堅調に伸びており、失業率は低水準を保っている。
- インフレは高止まりしている。
消費者物価指数CPI(8月)は前年同月比8.3%増と前月7月の同8.5%増からは伸びが鈍化したものの、低下に向かっているわけではない。声明でも指摘された通り、パンデミックに関連した需給の不均衡や食品・エネルギー価格の上昇、雇用コストも増加を続けるなど、広範な価格上昇圧力を反映して高い水準にとどまっている。コアインフレ率でみても、高止まっており、インフレ再上昇のリスクは引き続きある。
メルマガなどでも書いた通り、9月FOMCで注目されたのはドット・プロットに示される金利予測である。今回の一連の利上げで、短期金利がどこまで引き上げられるのかは非常に重要だからである(いわゆるターミナル・レートの議論)。6月のFOMCで示されたドット・プロットでは、2022年末時点で政策金利は3.25-3.50%との見通しが示されていた。また、短期金利の最高水準は3.75~4.00%とされていた。しかし、今回9月のFOMCで示されたドット・プロットでは、2022年末時点で政策金利は4.25-4.50%との見通しが示されていた。また、短期金利の最高水準は4.75~5.00%と示された。つまり、金利予測は上方修正され、それぞれ1.00%幅、高い水準に上昇したのである。そして、来年以降の金利動向については、2023年は短期金利は高止まりし、2024年になると低下に向かうことが示された。
パウエル議長は利上げ継続を示唆
パウエル議長は会合後の記者会見で、インフレを目標の2%に押し下げることをFOMCメンバーは「強く決意」しており、「この任務が完了するまで根気強く続けていく」と強調した。そして、金利上昇と成長減速、雇用市場の軟化は全て、国民に痛みをもたらすが、物価の安定を取り戻せず、将来的に再びやり直さざるを得なくなるほどの痛みではないと述べて、理解を求めた。FOMCは今後も、長期にわたって雇用の最大化とインフレを目標の2%に抑え込むことを目指して、積極的な利上げに動くとのシグナルを改めて発したことになる。
金融市場の動きは、一段と金利が上昇することを織り込むものだった。米国債券市場では、2年米国債利回りが4.00%を超え、4.05%まで上昇して、2007年以来15年ぶりの高い水準をつけた。10年米国債利回りは3.53%に低下して逆行する動きを見せ、逆イールドは一段と進行、2年―10年米国債利回り差は▲0.51%まで拡大した。
為替市場では、米ドルが一段と上昇して111.61をつけ、約20年ぶりの高値に達した。ユーロドルは、プーチン大統領がウクライナでの戦闘のために、ロシア国民を一部動員すると演説したことを受けて、戦争激化への懸念から1ユーロ=0.99ドルを割り込んでいたが、FOMC後に続落し0.981ドル台まで下げた。ドル円は、ドルが買い進まれ1ドル=144円台にのせ、一時は144円70銭まで上げる場面もあった。
FOMCは声明で、今後も、インフレを抑え込むことを最優先に、金融政策スタンスを調整していくことになる。今後の経済指標や国際情勢を引き続き監視しながら、インフレ圧力やインフレ期待をしっかりと見極め、金融・国際情勢などを幅広く考慮して判断すると述べた。金融市場は、短期金利の上昇という環境のもとで、以下に運用するかに頭を悩まされ続けそうである。
ご参考:FOMC(2022年9月) ドットプロット
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