日本のコアCPI(8月)は前年比2.8%上昇
日本の総務省が9月20日に発表した消費者物価指数(8月)では、生鮮食品を除くコアCPIが前年比2.8%上昇となり、前月7月の同2.4%上昇と比較しても一段と上昇が加速した。コアCPIの上昇は12カ月連続となった。伸び率では2014年10月に記録した同2.9%以来となる大きさで、消費税率引き上げの影響を除けば1991年9月に記録した同2.8%上昇に並ぶ高い水準である。これで、5カ月連続で日本銀行がインフレ率の目標とする2%水準を上回った。生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは、同1.6%上昇とこちらも7月の同1.2%上昇を上回った。また、東京都の統計では、コアCPI(8月)は同2.6%上昇とこちらも増税の影響を除けば約30年ぶりの高い伸びを示している。
企業間でのモノの価格動向を示す国内企業物価指数は、先週13日に発表されたが、8月に前年同月比9.0%上昇した。物価上昇率は前月(改定値)から横ばいで、これまでの原材料価格の上昇を転嫁する動きが続き上昇率は高い水準で高止まっている。
エネルギー価格は、前月比では0.2%上昇と7月の同0.7%上昇からは伸び幅が縮小した。春先の原油価格の急上昇を反映して事業用電力が値上がりした後、7~8月は国際商品市況が反落したことを受けてスクラップ類やガソリン、軽油、灯油が全般に値下がりに転じたことが反映されている。ただ、総じていえば、エネルギーや原材料価格が世界的に高騰して、卸売段階から消費者段階に価格転嫁が進行し、広範に物価の上昇がみられる状況に変わりはない。また、為替相場で円安が進行した影響で、輸入物価が上昇していることも物価の押し上げ要因になっている。
日本政府・日銀には危機感無し
岸田政権は、エネルギーや食品の価格上昇が家計への影響を強める中、非課税家庭への給付金交付など物価高対策を含む総合経済対策を10月にもとりまとめる方針だが、物価上昇に歯止めがかかる効果は期待できない。
日本銀行は、モノのコスト上昇分が、企業部門から消費者部門に価格転嫁されるかどうか、持続的な物価上昇に繋がる動きがみられるか、企業の賃上げの動きが続くかを注目しているとしているが、現段階では物価の上昇は一時的であるとの認識を繰り返し表明している。しかし、米欧では、これは既に通った途である。昨年前半、物価上昇が顕著になった段階で、米FRBや欧州中銀ECBは、物価上昇を一時的と見ていた。しかし、2022年に入って、結局、当初の想定を上回る金利引き上げを余儀なくされたことは記憶に新しい。
日本経済の成長率が上がらない中で、経済成長を促すために金利を低く留め置く理由もわからないではない。しかし、インフレが進行し、歯止めがかからなくなってしまった場合、特に一般家計に非常に大きなダメージとなる可能性がある。この点を日ぎにゃ政府はどう考えているのだろうか?
日銀は、直ぐには見方を変えないだろう。今週の政策決定会合では、金融政策の変更はなく、為替相場でのドル堅調の流れは変わらないと予想する。