香港・中国市場Dairy ~ 米インフレ率は、市場の期待のようにはピークを付けたとは言えず、株式市場は落胆安。ハンセン指数も反落
ハンセン指数18,847.10 pt (▲2.48%)
中国本土株指数6,470.65 pt (▲2.45%)
レッドチップ指数3,653.93 pt (▲1.35%)
売買代金937億7百万HK$(前日949億9万HK$)
13日に発表された米国消費者物価指数(8月) は、金融市場に高まっていた米国のインフレ率がすでにピークを打ち、落ち着いていくというシナリオを裏切るものだった。そのため、米国金融市場には動揺から、リスクオフの流れが強まった。8月CPIは前年同月比8.3%上昇で、ガソリン価格こそ前月比で大幅に低下した一方、食品とエネルギーを除いたコアCPIの伸びは前月比0.6%と期待に反して前月から加速した。
インフレのピークアウト期待が高まっていた市場にとっては、想定が外れた格好となり、米FRBがインフレ高進を抑え込むために利上げを継続し、場合によっては現在市場が織り込んでいる以上に短期金利が上昇することへの警戒感が広がった。CME Fed Watchによると次回20・21両日に控えるFOMCでは7月の75bpsの大幅利上げから100bpsの利上げを実施するとの観測が浮上し始めた。また11月の会合でも引き続き大幅な利上げを継続するとの見方が強まった。
株式市場はこうしたインフレ率の高止まりと金融引締め政策が続くことで、来年初めには米国経済が景気後退に陥るとの懸念が再び強まった。ダウ工業株30種平均は1,200ドル以上値下がりし、終値ベースでは今年最大の下げ幅となった。為替相場ではドルインデックスが反騰し、ドル円では一時、1ドル=144円96銭と米ドルが買い進まれて、145円台に迫った。
長期金利では、新発10年日本国債利回りは約3カ月ぶりに日銀の定める上限0.25%に上昇した。急激な円安に対して、日銀は市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施したほか、複数の政府高官からは為替介入を匂わせる発言も出た。そうした報道で、ドル円は一時143円台まで急落する局面もあったが、日米の金融政策の方向性の違いは鮮明で、日本政府の行動力にも疑問符が付く中では、介入警戒感も広がらないだろう。CPIを受けて、ドル金利先高観とドル高のリンクは、一層強まった感がある。147円台は、時間の問題ではないか。年末までに150円に達しても何ら不思議ではない。
14日のアジア株式市場は米株安を受けて全面安の様相となった。香港ハンセン指数も寄り付き後、下げ幅を拡大し前日比2.48%安と終値ベースで3月15日以来、半年ぶりの安値を付けた。同指数はここ数日の上げ幅を帳消しにし、香港株式市場は一転して弱気に転じた格好となった。米金利高を受けて香港ドルの指標金利であるHIBORレートは軒並み上昇。1ヶ月HIBORは4営業日続けて上昇し、2.09%と約2年半ぶりの高水準を付けた。
中国主要銘柄も、米株の下げに引っ張られて大きく下げた。インターネット検索の百度(9888)は5.6%安、Eコマース大手のアリババ(9988)は4.4%安、京東集団(9618)は4.1%安、スマートフォンの小米集団(1810)は3.3%安となった。
ハイテク株で構成されるハンセンテック指数は前日比2.85%安と9月に付けた安値を割り込み今年5月以来、約4か月ぶりの安値となった。半導体ファウンドリーの華虹半導体(1347)は5.7%安、インターネット保険の衆安在線財産保険(6060)は5.6%安、動画配信のビリビリ(9626)は5.1%安だった。
本土株式市場は上海総合指数は前日比0.80%安の3,237.54 、CSI300指数は同1.11%安と両指数は3日ぶりの反落となった。米利上げ加速が懸念されたほか、人民元安も再び進行。人民元は対ドルベースで一時6.98元台と節目の7.00元に近づいた。
中国人民銀行は14日、人民元の中心レートを1ドル=6.9116元に設定、元高方向での予想との乖離は過去最大と当局は通貨防衛姿勢を強めるも、現値水準から大きく離れる内容となった。米ドル金利との金利差拡大により、為替相場では、米ドル高・アジア通貨安がぶり返す形が再び見られた。
CPIの落ち着きに期待が強かった分、想定外の指標に落胆も相まって、市場は大きくリスクオフに傾いたが、やや行き過ぎの感はある。米国をはじめ、世界的に、インフレ率は急速に落ち着く状況ではない。金利水準が切りあがることを念頭に、相場観を組み立て直すときであろう。リセッションシナリオに疑問を感じているのはまだ少数派ではあるが、米国経済が案外腰が強いことも、CPIは示唆しているのである。