香港・中国市場Dairy ~ 中国政府による追加経済政策への期待が後退し、ハンセン指数は反落
ハンセン指数 20,574.63 pt (▲1.51%)
中国本土株指数 7,099.55 pt (▲1.11%)
レッドチップ指数3,711.03 pt (▲1.41%)
売買代金1,016億4百万HK$(前日893億0万HK$)
21日、中国政府による追加経済政策への期待が後退し、株価には重石となった。世界経済フォーラムの特別対話に参加した中国の李克強首相が19日に、経済成長の目標に柔軟性を持たせることを示唆するとともに、過度に経済を刺激することに対して慎重な姿勢を示した。雇用と物価の安定維持を重要視する姿勢は維持するものの、高すぎる成長目標を達成するためだけに、中国政府が大規模な政策を講じたり、流動性を拡大したりすることはないと言明し、低い成長率を容認できるとした。
中国は今年、GDP成長率5.5%前後を目標として掲げて、先月は習近平国家主席もこの目標の達成に向けてコミットする姿勢を示したばかりだった。李首相の発言の真意は不明ながら、中国経済の成長率は年5.5%に達するどころか、この成長ペースを下回っている。市場の予測は、厳しいものが増えており、7月も年4%を下回るとの見方は根強い。
追加経済政策への期待が後退したことで香港市場は午後にかけて下げ幅を拡大し、ハンセン指数は前日比1.51%下落した。また、中国本土では新型コロナウイルスの新規感染者が高止まりしており、一部の都市では再びロックダウンが実施されるとの噂もささやかれているようである。
また不動産市況の懸念も高まりりつつある。先週の住宅ローンの未払いに続いて、経営難に陥っている中国の不動産開発大手の一部サプライヤーが銀行融資の返済を停止する意向を示していることが報じられた。住宅ローン返済を拒否する住宅購入者が増える中で、サプライヤーの間でも支払いを拒否する動きが広がれば、さらに流動性問題に注目が集まる。
不動産株で構成されるハンセン本土不動産指数は大幅反落し、前日比4.66%安と先週15日に付けた終値を下回り、統計開始以来の最安値を再び更新した。不動産開発の旭輝集団(0884)は15.0%安、不動産管理サービスの碧桂園服務(6098)は8.8%安、不動産開発の龍湖集團(0960)は7.2%安、不動産開発大手の碧桂園(2007)は6.4%安と大幅反落した。
一方、ハンセンテック指数は前日比0.12%高と市場をアウトパフォーム、ゲーム関連株が押し上げた。中国の商務部など27部局は21日、「文化貿易の質の高い発展を促進するための意見」を発表し、クリエイティブ分野の開発を促進することに重点を置き、オンラインゲーム審査と承認の改革を進めていくとした。オンラインゲームの網易(9999)は6.2%高、ゲーム開発の心動公司(2400)は6.9%高、ビデオゲームのIGG(0799)は4.9%高となった。
本土市場では上海総合指数が前日比0.99%安の3,272.00と4日ぶりの反落、CSI300は1.11%安となった。景気後退を受け、金融株や不動産株が相場を押し下げた。また中国本土の新規感染者の拡大もネックとなっている。
外国人投資家の中国国債保有が5か月連続減少
外国人投資家の中国国債の保有が5か月連続の減少となったとBloomberg が伝えた。米国の金利上昇から中国国債の魅力が相対的に低下している事が主因と考えられる。中国10年債利回りは今年4月に米国10年債利回りを下回っている。中国人民銀行が発表したデータでも、海外投資家の中国国債保有は6月時点で約2兆3,000億元(3400億米ドル)と5月時点の2兆3,800億元から減少した。また外国勢による中国国債売り越しは5カ月連続となった。
20日、中国人民銀行は政策金利となる最優遇貸出金利の据え置きを決定した。人民銀行としては、物価に上昇圧力がかかる中で、積極的な金融緩和姿勢を示すことには抵抗感があるものと考えられる。
今後も欧米が積極的な金融引き締めの措置をとる中で、中国当局は景気減速リスクから金融緩和政策を維持する可能性が高い。金利差からは、外国人投資家の中国国債売りや、為替相場での一段の元安がリスクとなる可能性に注目しておきたい。